2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12293
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山本 真由子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (00784901)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 序 / 詩序 / 宴集 / 本朝文粋 / 江談抄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、平安朝の和歌序を注釈し、その特質と意義とを明らかにすることである。本研究では、平安朝の和歌序、すなわち和歌制作の背景となる状況を文章とした作品をあつかっている。和歌序は、それだけで独立して鑑賞し得る作品である。和歌序は、漢文と和文(仮名文)の作品が残る。それらは内容から、書序(一書の序)、宴集の序、定数歌の序に区分される。 当該年度は、著書『平安朝の序と詩歌―宴集文学攷―』(塙書房)を刊行した。同書では、平安朝の宴集において制作された序と漢詩や和歌の表現の成り立ちや特質を明らかにすることを主な目的として、特に序を軸として論じた。序としては、和歌序に加えて、漢詩の序である詩序も取り上げている。Ⅰ「和歌序と詩歌」では、源順や源道済の和歌序について、その特徴を明らかにした。また、村上朝の末頃から花山朝にかけて(960-986年頃)、河原院に集った歌人達によって書かれた仮名文の和歌序を集成し本文を校訂した上で、その特質や意義を考察した。Ⅱ「詩序と詩歌」では、源順とその後進の手に成る詩序の表現について、詩題や典故との関係を検討した。Ⅲ「序の展開」では、序と他のジャンルの作品、歌合の仮名日記や物語文学との関わりを論じている。 また、『本朝文粋』に、和歌真名序1篇、詩序6篇の作品が残る、菅原文時(899-981)の序の註釈を進めて、その特質を考察した。また、文時に関する話が多い『江談抄』、仮名序を収載する『古今著聞集』などの説話集における和歌序についての記述を収集し分析を進めた。これらの研究の成果は、令和3年度中に発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画どおり、和歌序を収載する資料の調査、収集、整理は進めているものの、和歌序本文の異同を調べて校訂すること、注釈することなどは、想定していたより時間がかかるため、一部の作品にとどまっている。 また、著書を刊行する用意をしたため、校正や索引の作成などに多くの時間を割くことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、平安朝の和歌序を収載する資料の諸本の調査、収集、整理を進める。今後の調査対象としては、私家集、歌学書、古記録を予定している。 併せて、解題的研究(和歌序と同時に作られた和歌の収集、歌会の開催年時、作者、主宰者、参加者、場所など)を進めて、後世への影響が大きい作品や、際立った特徴のある作品を中心に、本文の校訂や注釈を行う。 また、平安朝を通して和歌序はどのように展開したのかを探るため、歌題と和歌序の表現の関わり、主宰者や参加者についての描写の変遷という点から考察する。 注釈や考察の成果は、論文にまとめ、所属大学の紀要、学術誌に掲載する。
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Causes of Carryover |
物品費として使用予定であったが、研究計画を変更したため、購入予定の物品を次年度に購入することとなり、次年度使用が生じた。次年度の物品費と合わせて使用する計画である。
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Research Products
(1 results)