2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12294
|
Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
古田 正幸 大正大学, 文学部, 准教授 (10644635)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 源氏物語 / 引歌 / 平安朝文学 / 注釈 / 葵の上 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでの『源氏物語』第一部の引歌を検証した研究成果を踏まえて、『源氏物語』若紫巻における葵の上の「とはぬはつらきものにやあらむ」という台詞の中の「とはぬはつらきもの」に狭義の引歌(引かれた歌の他の歌句や詠歌状況を踏まえて本文を読解する必要がある引歌)を認定すべきか否かについて検討を行った。 会話文において女性登場人物が引歌を用いており、光源氏がその引歌を聞いたときの反応が確認できる箇所として、第一部からは若紫巻以外に四つの場面を挙例することができる。分析の結果、そのいずれにおいても、光源氏は女性の引歌に対して別の引歌を用いて切り返したり、女性登場人物が用いた引歌の一節を踏まえた会話を展開していることが確認できた。 そのことを踏まえると、若紫巻における光源氏は葵の上の発言を引歌として解釈して切り返していないと考えられる。そのため、当該箇所では引歌の含意を認めるべきではないと結論づけた。このことによって、光源氏と葵の上の会話文において、葵の上が光源氏をやり込めた機微が明らかになった。 上記の成果は「『源氏物語』若紫巻における「とはぬはつらきものにやあらむ」考―光源氏の会話文における引歌理解を中心として― 」(『むらさき』57号、2020年12月)に公表した。 その他、第一部における引歌の検討を継続して行っており、その成果の公表を今後も計画していく。とくに、『源氏釈』の出典未詳歌が引歌として踏まえられている箇所に絞って研究を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響により、図書館などでの調査が困難であったことから、やや進捗が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1年間の延長を申請したため、引き続き引歌の検証を行い、成果を公表していく予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、図書館などでの調査が困難で遅れが生じたために次年度使用額が生じたものである。今年度においては、データベース代などに充てることで、遅れを取り戻す計画である。
|
Research Products
(1 results)