2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of "Hikiuta" in The Tale of Genji, Part I
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18K12294
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
古田 正幸 大正大学, 文学部, 准教授 (10644635)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 『源氏物語』 / 引歌 / 『多武峯少将物語』 / 散文 / 地の文 / 和歌 / 会話文 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、前年度に続いて『源氏物語』の散文表現における、和歌的な表現の在り方について研究を行った。研究の主たるテーマでもある「引歌」表現については、『源氏物語』の研究を進めると共に、『源氏物語』以前の作品における引歌表現の在り方を研究する必要があることもわかってきた。そのため、特に本年度は『源氏物語』とさほど成立時期が離れていない歌物語や歌物語的な私家集における、散文部分の引歌表現についての研究を行った。 その成果の一部は、「『多武峯少将物語』における消息文・会話文の引歌について」と題して『武蔵野文学』69号(2021年11月)に公表することが出来た。『多武峯少将物語』は、従来「地の文」に引歌が多く、その多くが『古今和歌集』を出典とするとされてきた。本研究の成果としてはいわゆる「地の文」には引歌表現が確認できず、消息文や会話文に限られること、しかも、その消息文や会話文が高光室周辺に限定されることが明らかになった。こうした引歌が偏在する事象は、高光室の周辺に存在した消息文や詠歌と共に残された記録などが物語の素材となっていることを示唆する可能性があることを指摘した。 ひるがえって、『源氏物語』に立ち戻ると、引歌は消息文・会話文に限定されず、地の文も含めて勅撰集以外の資料に残る和歌が引歌として多用されていることは明白である。『源氏物語』作者が想起し得た、もしくは利用し得た歌集の認定を視野に入れて、今後も研究を継続する必要があると判断される。
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Research Products
(1 results)