2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12296
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
滝澤 みか 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 講師 (20778683)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 保元物語 / 平治物語 / 軍記物語 / 奈良絵本 / 教訓性 / 古注釈書 / 保元物語大全 / 平治物語大全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はこれまでの成果の論文の公表をしつつ、本研究課題を進めていく中で新たに着目するに至った資料の内部検証を深め、その成果として2件の口頭発表を行うことが出来た。 まず論文「馬の博物館蔵画帖にみる『保元物語』『平治物語』の二段階の享受と構成」(中根千絵氏他編『合戦図 描かれた〈武〉』〈勉誠出版、2021刊〉所収)では、画帖を通して軍記物語の絵画化の問題を検証している。『保元物語』『平治物語』は流布本段階になると教訓性を帯び、それに伴い独自の内容で本文を構築していくが、絵画化される場合、必ずしもそれらが忠実に絵に反映されるわけではないことは前年度までの研究成果で示してきた通りである。本論文で取り上げた馬の博物館画帖はまた新たな絵画資料であり、戦乱の物語の絵でありながら、処刑場面を避けるという傾向を持つことが確認出来る。絵巻の模本とは異なり、奈良絵本や版本の場合は場面選択に物語との向き合い方が表れていると言えよう。また、画帖の形態に再編されているという点、特異であり、その際にも物語本文との接触が窺えること、更には本文が失われた後も、新たな物語の流れを示すことが有り得ることを指摘した。 次に、口頭発表「『保元物語大全』『平治物語大全』の物語読解と教訓性の行方―軍記物語の古注釈書の一端―」(早稲田大学国文学会、2021.12)と「西道智著『保元物語大全』『平治物語大全』にみる読みの流動」(軍記・語り物研究会、2022.1)は、軍記物語の教訓性の維持の問題を考えるため、『保元物語』『平治物語』の古注釈書の研究に取り組んだものである。内部検証の結果、両物語の古注釈書は流布本の内容とはまた異なる教訓を示す書となっていると考えられ、中近世の教訓書とも比較していく。古注釈書については、また別途の研究課題において更に広く軍記物語全体の問題として総合的に取り組む見通しである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
部分的には調査を再開出来たものの、昨年度同様の社会情勢により、中止せざるを得ない期間もあったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を進める中で新たに着目した資料の調査も引き続き行いつつ、当初の研究計画もまとめていく。また、海外作品との比較の準備も進めている。 所属機関が移るに伴い、研究の拠点も変更となる。社会情勢により他県ということで足を運ぶことが難しかった関東地方の多くの資料所蔵機関の調査を本年度は進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
社会情勢により資料調査に行くことが難しい期間が生じ、使用計画を一部再考する必要があったため。所属機関が移るに伴い、前年度まで県を跨ぐために社会情勢により行くことが難しかった期間もあった関東地方の各機関へのアクセスが可能になるため、調査を進めていきたい。
|
Research Products
(3 results)