2018 Fiscal Year Research-status Report
Haikai poetry in the Early Modern Pleasure Quarters and Theatre Districts -Kikaku and the Edoza Haikai Cicle
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18K12297
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
稲葉 有祐 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 講師(任期付) (90649534)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 宝井其角 / 市川団十郎 / 新吉原遊廓 / 江戸座俳諧 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は元禄期から享保期における江戸関連の俳書や一枚摺等を中心に、遊廓・芝居関係者の入集状況を調査し、データベース化を進めた。 その際、特に宝井其角とその周辺俳人達の活動を追い、例えば、まず新吉原遊廓での遊興がいかに句に詠まれていったか、また遊廓自体がいかに表現されていったかを調査・分析した。俳諧という視座から悪所文化を浮かび上がらせるという本研究の目的を遂げるための補助的な作業として、遊里文芸である洒落本の網羅的な調査を併せて行ったところ、其角句が後世にあっても多々引用されている事実が確認され、その遊廓における影響力の大きさが浮き彫りとなった。そして、例えば其角周辺に存在する豪商紀伊國屋文左衛門の活動等から、遊客としての立場から見た江戸の遊興のあり方、その背後にある社会状況などについて考察を深めていった。 加えて、新吉原遊廓での文芸活動を相対化するため、同遊廓の遊女のみならず、元禄期及びそれ以前の貞門・談林期の作品における各所遊里の遊女達の俳諧活動についても範囲を広げて調査をしている(例えば京伏見の遊廓関係者による歳旦帖に遊女の参加する事例等が確認された)。また、遊廓と繋がりのある江戸座俳人の事蹟について調査・報告した。 歌舞伎関連事項としては、初代市川団十郎・中村七三郎ほか、元禄期の役者と其角との交流や俳諧活動について調査するとともに、二代目市川団十郎の日記から、享保期の江戸座俳人との親交を示す記事を抽出し、分析した。顔見世といった表舞台のみならず、楽屋やプライベートでの交流を題材とした俳諧活動の解明である。また、二代目団十郎とともに代表的な役者俳人である初代沢村宗十郎の事蹟について調査を進めることで、享保期の芝居の文化圏と江戸俳諧との繋がりについて考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度においては、元禄期から享保期にかけての調査・分析を進めた。予算支出の面からみると、当該年度は本研究にとって有益と目される其角関連俳諧資料の購入を優先的に行う必要が生じたため、例えば秋田県立図書館・京都学歴彩館・国文学研究資料館や国会図書館等での調査のほか、地方公共機関・図書館への訪問に充てる費用は少なめとせざるを得なかったが、調査対象の中心となる元禄期は幸い資料の翻刻・影印が比較的に他の時期よりも整備がなされていることもあり、概ね順調に進めることが出来たと考えている。 また、研究実績の概要において述べたように、貞門・談林期の作品も併せて調査を行ったが、その際、『貞門談林俳人大観』・『元禄時代俳人大観』等といった人名索引を活用することで、効率よく対象を絞り込み、研究を進めていった。特に元禄期の其角の活動を軸として、江戸俳壇と遊廓・芝居との接点について具体的な作品をもとに分析を行い、以後の悪所文化研究への一つの土台を構築することが出来たと感じている。 なお、俳書の調査の他に、例えば洒落本・随筆における俳諧関連記事の抽出・分析や、研究の円滑な推進のため、役者の俳号に関するデータベースの構築も行っている。その他、其角門の俳人、結城屋来示の著作とされる『新吉原徒然草』は、遊廓・歌舞伎についての記事が散見される重要な書であるが、諸本の間で異同の多いため、現在、本文の対校・整理を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年(令和1年)度は、前年に引き続き、詞書・肩書・配列等に目配りをしながら調査対象を享保期から寛延期までの俳書へと広げて調査を行う。この時期の俳書は活字化されていないテキストも少なくないため、各種大学図書館・地方図書館・公共機関への調査や、東京大学総合図書館洒竹・竹令・知十文庫、国文学研究資料館のマイクロフィルム資料等を活用して研究を進めていく。その際、前年度に調査しきれなかった資料もできる限り拾い上げていきたい。 遊廓関連事項としては、元禄の其角らの活動を踏まえながら、享保13年、江戸座俳人による名妓玉菊の三回忌や、同19年の新吉原の遊女達の句集『桜かゞみ』等を中心に分析・考察し、俳諧文芸から遊廓の文化を捉える試みを予定している。 歌舞伎関連事項としては、まず江戸座俳人や歌舞伎役者の一座した連句の注釈を行い、それを通じて作風や志向を考察する礎を築く。そして、役者と親交のある江戸座俳人の湖十・貞佐やその門流の活動を重点的に調査し、芝居の文化圏を捕捉することを目指す。併せて、前年においても調査をすすめた初代沢村宗十郎の活動について、寛保3年の句集『置土産』や没後の追善集等をもとに考えていく。 その他、評判記・浮世草子・随筆等によって、重要視される人物の追跡調査をし、その活動・動向を追うことで、悪所文化における具体・実態の解明を試みる。これらの研究については随時、口頭発表を行い、論文化を進めていく予定である。
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Research Products
(7 results)