2020 Fiscal Year Research-status Report
明治期における華族と御歌所の文化圏形成に関する研究
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18K12303
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Research Institution | Oita Prefectual College of Arts and Culture |
Principal Investigator |
長福 香菜 大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 講師 (90634949)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 華族 / 御歌所 / 正風社 / 興風会 / 向陽会 / 文化圏 / 近世和歌 / 近代短歌 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、前年度に調査を実施した巻菱湖記念時代館蔵『御歌所寄人阪正臣氏談話速記』(以下『談話速記』と略す)をもとに、『談話速記』諸本の関係性と『談話速記』における阪正臣自筆の校正箇所について検討をおこない、その成果の一部を「『御歌所寄人阪正臣氏談話速記』を読む」(『日本文学』第69巻9号)と題して論文にまとめた。正臣は明治20年から御歌所に勤務した御歌所歌人であり、『談話速記』は『明治天皇紀』編修にあたって宮内省臨時帝室編修局が正臣に聴取した談話の記録である。『談話速記』は、管見の限り宮内庁宮内公文書館蔵の3冊(A~C本)と巻菱湖記念時代館蔵の1冊、計4冊が存する。A本は手稿本であり、朱筆や鉛筆による加筆や修正が散見されるのに対し、B・C本はタイプ版であり、A本の書き入れが概ね反映されているが、さらに朱墨による手書きの校正が施されている。巻菱湖記念時代館本はB・C本と同じくタイプ版であるとともに、朱墨による手書きの校正も含め同様の内容を持つが、B・C本には見られない朱書きによる加筆・修正が正臣の手によって新たに施されているという点に特徴がある。校正箇所はいくつか確認できるが、特に2箇所を取り上げ考察をおこない、正臣の校正意図について言及した。明治天皇の歌道や御歌所による御製拝見、歌会始など関する様々な証言を収録する『談話速記』は当時の宮中歌壇を知るうえで貴重な資料と言える。 また、明治10年から同43年までの「正風社」歌会の記録である、陸奥国弘前津軽家文書『正風社歌会始1~12』(国文学研究資料館蔵)の調査を継続し、解読して整理する作業に努めるとともに、これまで調査をおこなってきた松平文庫蔵「正風社歌会関係資料」や蓬左文庫蔵『正風社歌会之集』、鹿児島県歴史資料センター黎明館蔵「正風社十番歌合」などの資料とあわせ、「正風社」を総合的に検討する作業をおこなっている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、予定していた出張がおこなえず、資料調査・収集に遅れが生じたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間の延長により、次年度が最終年度となる。本研究では特に「正風社」の実態解明を掲げているため、これまで収集をおこなってきた「正風社」関係資料の整理に取り組み、その実態について総合的に検討する。あわせて「向陽会」「興風会」との関係性も視野に入れながら、明治期における華族と御歌所の和歌活動の一端を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、当初実施予定であった資料調査・収集のための出張を中止せざるを得ず、次年度使用額が生じた。次年度においては複写費をはじめ、華族の調査や明治期の和歌(短歌)・歌壇研究に必要な書籍の購入費などで有効に使用したい。
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Research Products
(1 results)