2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K12358
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
高橋 真彦 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (30709209)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 格付与 / 例外的格標示構文 / 義務的移動分析 / 随意的移動分析 / 不定代名詞 / 付加詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は一致による格付与を支持するとされてきた観察を取り上げ、それらの観察が一致による格付与を必ずしも含意しない形で分析可能であるか検証した。特に、日本語例外的格標示構文の随意的移動分析を支持するとされてきた現象を詳細に検証し、それらの現象を義務的移動分析の下でどのように分析できるか検討した。具体的には、以下の2点について考察し、その成果の口頭発表及び論文執筆を行った。 (1)不定代名詞の分布と付加詞の分布 これらの現象については、分析の前提となる仮定自体を見直すべきであると主張した。具体的には、(A)不定代名詞の分布は転送領域によって決定される、(2)補文の副詞は対格主語の移動に「ただ乗り」すると提案し、両事実を義務的移動分析によっても説明できると主張した。これらの主張は不定代名詞の分布と付加詞の分布に関する新たな事実観察によって支持される。この研究成果は日本英文学会第90回大会シンポジアム「Merge と Labeling を巡って」にて発表された。 (2)例外的格標示と補文の種類との相関関係 この相関関係については、ラベル付けアルゴリズムの観点からの分析を試みた。具体的には、ある種の補文の主語に対して例外的格標示ができないことは、主節でのラベル付けが成立しないことに帰されると主張した。この分析は補文と格の分布の相関関係によって支持される。この研究成果は国立国語研究所共同研究プロジェクト「日本語から生成文法理論へ : 統語理論と言語獲得」第5回ワークショップにて発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)例外的格標示構文における不定代名詞の分布と付加詞の分布、および(2)例外的格標示に課せられる制約、以上2点について新たな分析を提示することができた。また、研究成果を複数のワークショップ等で発表した上で、論文の執筆に着手することもできた。有益なフィードバックも多く得られ、次年度の研究方針も明確にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2018年度の研究成果を土台にして、(1)例外的格標示に課せられる制約の更なる考察、および(2)格認可のメカニズムについての考察、以上2点を進めていく。これらの成果を学会やワークショップ等で発表し、論文として投稿する。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも論文執筆を早く開始でき、論文執筆時間を確保するために学会出張等を控えたことが大きな理由である。次年度使用額は(1)論文の英文校正、(2)学会発表のための出張、および(3)書籍の購入に当てる予定である。
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