2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12397
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
深津 周太 静岡大学, 教育学部, 講師 (50633723)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 疑問詞 / 「なに」 / 狂言台本 / 意外性標識 / 一語文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中近世日本語における疑問表現の感動詞化を扱うものである。 「なんと」という疑問表現の呼びかけ感動詞化を対象とした前年度に続き、同表現が驚き・意外性を標示する感動詞へと変化する点に着目したのが本年度の研究である。 具体的には、相手の発話への問い返し疑問に前置される、「勧進帳をあそばされ候へ〈略〉」「なにと勧進帳を読めとや」(謡曲・安宅)のような「なん(に)と」を変化の契機的用法と推定し、特に中世後期から近世初期における当該表現の実態を確認した。その際、同文脈に現れる疑問表現「なに/なんじゃ」も併せて扱うこととし、各表現の用いられ方を比較した。ただちに感動詞化の議論に向かわなかったのは、驚き・意外性を標示する感動詞への変化は一語の歴史として捉えるのではなく、当該表現全体の歴史の中に位置づける必要があると判断したためである。結果として、①主資料とした狂言台本群には各表現の現れ方に差があり、同時代の資料であっても一様に扱うことはできないこと、②当該表現の中心は、中世末期の「なんと」から近世初期の「なんじゃ」へと変化していくことが明らかになった。 また、研究期間中に扱う範囲の文献資料から疑問詞・疑問表現の用例収集を行った。特に索引・コーパス類が整備されていない資料を中心に、疑問詞「何」を基とした表現を抽出し、用法の分析を施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の段階では、本年度の主なテーマは「なんと」が驚きの感動詞へと変化するという一語の歴史を想定したものであった。また、それとは別に、研究全体の課題の中に、問い返し表現に先立って現れる「なに/なんと/なんじゃ」の歴史的考察にも触れることとなるとの見通しを示してあった。 本年度の研究内容は、前者のテーマを後者の観点へと組み込み直したものである。語史としての結論を出すことはしなかったが、むしろ疑問表現全体の問題として重要なテーマへと派生したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究を承け、問い返し表現に前置される「なに」系の疑問詞群について、今回は触れられなかった近世前期以降を含めた歴史的な展開を明らかにする。その中で、当用法を契機として特定の語が感動詞化していくことにも触れることとなろう。 それに加えて、当初の予定に従い、「なに、大したことじゃない」のような否定応答の感動詞「なに」の成立にも取り組んでいきたい。 相手の発話を受け、それに対する反応を行うと言う意味では、ここに挙げた二つのテーマは相互に深く関連するものと考えられる。
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Causes of Carryover |
主に旅費面で次年度使用額が生じた。校務等による出張減に加え、コロナウイルスの影響により3月以降の出張予定が全て白紙となったためである。 次年度使用分は、令和2年度に開催される学会発表関連経費に使用する。
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