2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12397
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
深津 周太 静岡大学, 教育学部, 講師 (50633723)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 疑問詞 / 「なに」 / 近世日本語 / 応答表現 / 否定応答 / 一語文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中近世日本語における疑問表現の感動詞化を扱うものである。 「なんと」という疑問表現を取り上げ、呼びかけ感動詞への変化(2018年度)と驚き・意外性を標示する感動詞への変化(2019年度)に焦点を当てた前年度までの成果を承け、本年度は「なんの」という表現に着目し、それが否定応答の感動詞へと変化していく様相とその要因について考察を試みた。 「なんの」は中世後期以降、「公方カラヲカルヽ都尉カ何ノ其様ニハアラウソ」(史記抄)のように反語表現に利用される。反語を広く否定の表現と見れば、この「なんの」は否定文脈における用法ということになる。特に近世期におけるこれらの表現の展開を概観した結果、反語用法としての「なんの」が明示的な否定形式と共起する用法を新たに生み出すことが明らかとなり、それは反語用法が孕む語用論的意味としての“否定”が前面化した否定強調用法であることを主張した。さらに、それが近世後期以降に否定応答文脈(発話頭)での使用に偏っていくことを中心に論じ、感動詞化のプロセスに見通しをつけた。 また、花鳥社HPに掲載された「学界展望 日本語の歴史的研究」(2019年7月~12月)の執筆を通じ、特に共時的研究・通時的研究という方法論について見つめ直す機会を得ることができ、その成果も本年度の研究に活かされた。 さらに『日本語文法史キーワード事典』(2020、ひつじ書房)において、本研究に直接かかわる「感動詞」の項目の執筆を担当し、感動詞化に関する記述を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の段階では次年度分の課題としていた「なんの」の感動詞化に先に取り組むこととした。当該表現に含まれる格助詞「の」は、主格を表す場合と属格を表す場合があるため各用法に目を配りながら分析を進める必要があることと、同様の機能を有する格助詞「が」のふるまいにも関連づけて考察しなければならないことから、いくつかの段階を踏みながら論の精緻化を試みたいと考えたためである。 まずはその基礎をなすものとして、本年度は学会における口頭発表という形で、「なんの」及び「なにが」の歴史全体を概観しつつ変化の大枠を描くことができた。それにより解明された点と再検討すべき点が明らかになったという意味で、本研究の進捗状況は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは上記の通り、本年度取り組んだ「なんの」の感動詞化についてさらに考察を進めることで、疑問表現の歴史的研究という観点から見ても有意義な成果を得ることができると考える。 加えて、当初の研究実施計画では本年度に取り組む予定であった、否定応答の感動詞「なに」の成立にもアプローチしていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス蔓延に際して学会がオンライン実施等の措置を採ったため、想定していた出張費を消化できなかったため。併せて、例年学会会場における書籍展示で購入することの多い図書類が購入できなかったため。 次年度も同様の状況が見込まれるため、特に図書に関してはオンラインで購入することを検討している。出張費として想定していた分については、PC関連など研究環境の改善に充てたい。
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Research Products
(1 results)