2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12494
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
武井 紀子 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (30736905)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 律令財政 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当初の研究計画に沿って、財政関連の諸史料の蒐集とその検討を進めるとともに、賦役令・倉庫令等の律令財政関連篇目の日唐比較研究を実施した。倉庫令については、これまで地方正倉の管理体制および出納体制についての検討を重視してきたが、今年度は中央財政にかかる蔵庫について重点的に扱い、改めて関連条文を再検討した。また関連して、蔵庫の出納にかかる正倉院文書等について史料を収集し、法制と実際の出納管理体制の関係についての考察に着手し始めた。今後、この検討をもとに、中国等のあり方との比較を実施する計画である。 また、京への貢納拠点となる地方官衙における租税の生産・貢納体制について、平城宮出土木簡および地方官衙出土木簡を用いて、生産から貢納までの一連の流れの中で検討を加えた。特に、伊場遺跡群をはじめ、主要税目である租・調・庸・出挙および労働徴発関連の木簡が多数出土している静岡県の各官衙関連遺跡の木簡の実見調査およびその検討を行った。そして、郡以下のレベルで税物がどのように生産・集約されていくのか、また、調庸が都へ貢納されるまでの過程、および、地方官衙において租や出挙稲がどのように出納管理されていたのかについて取りあげ、それぞれの具体的なあり方を明らかにした。伊場遺跡群における具体的な諸相は、今後取りあげていく地方官衙の検討に際しても一つのモデルとなり得る事例であり、その点で大きな成果を挙げることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従いおおむね順調に進んでいると考えられる。中国・朝鮮半島諸国との実態的な比較という点は本格的に着手できていないが、その代わりに、古代国家と東北地方の蝦夷との交易等について検討する機会を得ており、本年度の研究成果と合わせて、次年度以降の研究計画を推進できるだけの状況は整えられたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に述べたとおり、本年度は、財政関連の法制度の比較研究と、文字資料を用いた地方官衙における実相の解明において成果を挙げた。今後は、史料蒐集を継続しつつ、未だ成果公表に至っていないものについて、論文等での公表を目指すとともに、主に地方財政についての具体的事例を積み重ねていくことを目指す。また、並行して、当初の計画通り、中国等の財政関連史料との比較を試みていく。
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Causes of Carryover |
本年度、海外調査を一件予定していたが、研究の進捗状況に鑑み、次年度以降に変更したため。
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Research Products
(5 results)