2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12494
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
武井 紀子 日本大学, 文理学部, 准教授 (30736905)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 律令財政 / 日唐律令比較 / 出土文字資料 / 租税制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究機関最終年に当たったが、昨年度における国内・海外調査等の進捗が思うように進まなかったことを受け、その代替のために、発掘調査報告書などからの律令財政関連の出土文字資料の蒐集および律令財政関連篇目(賦役令)の日唐比較研究、またこれまで調査した史料に関する知見をまとめる作業に徹し、次年度に繰り越した調査、成果公表と研究総括に備えた。 第一に、藤原宮跡出土庄園関係木簡について、奈良文化財研究所による正報告書の刊行を受け、その書評というかたちで当該史料に対する見解をまとめた。本史料は以前実見調査したことがあり、その時の調査記録および今回の報告書の知見を受け、庄園経営における税収入、正倉への納入の手順を指摘した。 第二に、古代日本における課役賦課の論理を探るために、服属蝦夷である俘囚の調庸民化のプロセスについて検討を加えた。賦役令辺遠国条の日唐令比較など、中国唐の異民族支配における租税賦課のあり方などとの比較を通じ、内国に移配された俘囚に対する調庸賦課の問題について考察した。移配俘囚の調庸賦課の問題は、彼らの身分的問題とも深く関わり、調庸を賦課されることが古代日本においてどのような意味を持っていたのかを考える格好の素材となりうる。このことについては、現在論文を執筆中であり、近日中の公表を目指している。 第三に、賦役令・倉庫令の条文を用いた租税の徴収・納入手続きについて、昨年度公表した論文をもとに、当該篇目における位置づけを再検討した。 第四に、研究の基礎をなす古代法制史料の史料学的調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一昨年度、昨年度と海外調査の機会が失われ、現地の研究者との意見交換や出版作業の遣り取りが容易にできなくなってしまったことが研究の進捗に影響している。また、国内についても史料調査の日程がうまく組めなかったことが研究遅延の要因として考えられる。次年度は、研究総括も含め、これらの遅れをカバーしながら進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、第一に研究全体の総括を目指す。研究課題のうち中核をなす法制史料(倉庫令・賦役令)を中心とする租税の徴収・納入手続きについては研究成果をすでに公表しており、これを基礎にして、古代東アジアにおける租税の徴収のあり方についてまとめたい。現在成稿中の研究成果については早期の公表に努め、上記研究総括に組み込めるように努める。 また、調査の済んでいない史料についても可能な限り実見調査を試み、それが不可能な場合については、調査報告書を取り寄せるなどして研究に支障の無いように進める。
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Causes of Carryover |
国内外における出張費が当初の予定通りに支出できなかったので、その分を繰り越すこととなった。次年度は、当初予定していた出張予定をなるべく消化すると共に、残りの分の使用については、出張できなかった時のための代替資料(発掘調査報告書および研究書)の購入に充てたいと考えている。また、これまでの研究成果をまとめて広く公表するために、学会報告にかかる出張費、さらに研究書刊行のための準備などに充用する予定である。
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Research Products
(4 results)