2020 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の漢学塾と知識人の思想形成に関する史料学的研究
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18K12496
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 友香理 筑波大学, 人文社会系, 助教 (90756280)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 長善館 / 鈴木虎雄 / 漢学塾 / 対外硬運動 / 私塾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治期の漢学塾の関係史料を悉皆的に調査し、近代日本の知識人の思想形成における漢学の役割とその知的ネットワークの広がりを明らかにすることを目的とするものである。主な研究対象は、天保4年(1883)から明治45年(1912)にかけて現在の新潟県燕市に存在した漢学塾である長善館とその館主・塾生の思想と行動である。 2020年度は、研究計画書に記したとおり長善館をめぐる人的広がりについて、館主一族や塾生の子孫を訪ね史料調査を行なった。あわせて歴代館主の日記をすべて解読し、年表と人名録を作成し、館主一族を中心とする知的ネットワークの広がりと塾生の社会階層について考察した。その成果をふまえ、中野目徹監修『日記で読む長善館 鈴木家三代の幕末~明治』(2021年3月、燕市)の第5、6章を執筆し、本年度までの成果の一部を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『日記で読む長善館』の第5、6章を執筆し、成果の一部を前倒しで発表することができた点において、当初の計画以上に研究が進展したといえるが、一方で大学がコロナウィルス感染防止を目的としてオンライン講義を推進したことに伴い、院生等の短期雇用(対面)を用いた日記や書簡の翻刻作業を停止した。それに対して、オンラインによる代替措置等をとったが、作業にやや遅れがみられた。また、現地調査も当初の予定どおりとはいかなかった。したがって、来年度は翻刻作業と調査を重点的に推進する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は新潟における実地調査がほぼできていないといえるので、来年度はコロナウィルス感染防止措置を十分にとったうえで、新潟県の文書館や門下生の御子孫宅での実地調査を重点的に行なう必要がある。また、すでにデータ化している書簡の翻刻作業も早急に進める必要がある。 それらをとおして、長善館の門下生がいかなる教育を受け、館卒業後にいかなる社会的役割を担ったのかについて考察し、最終年度の報告書を作成したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は以下の通りである。今年度はコロナウィルス蔓延防止のため、大学が閉鎖・オンライン講義措置をとったことに伴い、短期雇用で院生等を用いた日記・書簡の翻刻作業(対面)をほぼ停止した。また、実地調査をほぼ行うことができなかった。 使用計画は以下の通りである。来年度もコロナウィルスの蔓延状況を注視しながらも、何とか実地調査の機会をつくり、門下生の史料を調査、閲覧する。また、すでにデータ化している書簡については、短期雇用で院生等を用いて翻刻作業を行ないたい。その際にはオンラインでの対応を検討する。
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Research Products
(1 results)