2020 Fiscal Year Research-status Report
日清・日露戦間期における日本外交の再考―日清追加通商航海条約を中心に―
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18K12505
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
古結 諒子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80725870)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日清戦争 / 日露戦争 / 義和団 / 通商航海条約 / 日本外交 / 近代 / 日露協商 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は資料の読み込みと研究成果のとりまとめを優先した。資料の読み込みでは、日本・海外資料をもとに、日清追加通商航海条約と日露協商の相互関連性を交渉および内容に即して整理した。その結果、日清戦争後、清をめぐる多様な制度が成立する中での19世紀の延長としての日清追加通商航海条約の役割、また、日清追加通商航海条約に対する日露協商の補完的役割を明確にすることが可能になった。これに関連する先行研究の整理では、第一次世界大戦後の中国をめぐる国際関係の原点として当該期に注目するイギリス史・アメリカ史・中国史に対し、一方の日本史は日露戦争の一部として注目しており、本年度の研究結果が日本史と世界史の交差点に位置づけられることを再確認した。だが、本年の研究結果はあくまでこれまでの日本史の研究が残した課題の実証であるため、世界史の研究動向に対してどのように貢献できるのか、その位置づけ方は今後の検討課題となった。 同様の問題は、第70回愛知県世界史教育研究会での報告においても浮上した。この研究会では日清戦争から日露戦争にかけての東アジアの国際関係を示す風刺画を教材として活用する上での留意点や資料としての可能性を提示する報告を行った。だが、欧米と日本の関係を明らかにし得ても、清の主体性をどのように位置づけるかが日本史と世界史の接続の課題の一つであることを確認した。ほか、西洋史学会では「日清追加通商航海条約締結交渉と日・英・米」という研究報告を行い、日本史の細かい実証作業に対して、大局的見方の必要性を確認した。そして『図書新聞』への寄稿では、塚本英樹『日本外交と対中国借款問題』(法政大学出版局、2020年)の批評と紹介を行うことで、学術書を社会的に還元する役割を果たした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍に伴う学内業務の転換に時間を割かざるを得ない状況となった点、また、他大学や資料館・図書館へのアクセスビリティに制限が出てしまった点などが研究の進捗に影響を及ぼした。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍によって図書館や資料館の利用については暫く制約があると考えられるが、手元にある資料を活かして引き続き研究成果の発信に取り組む。その際、日本史による緻密な実証成果と世界史の研究動向との接続をどのように処理するのかを意識したい。
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Research Products
(2 results)