2018 Fiscal Year Research-status Report
個人史から見る環太平洋地域を越境する社会運動のネットワーク
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18K12507
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
上原 こずえ 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (60650330)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 帝国 / 開発 / 環太平洋地域 / 移動 / 境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
①具体的内容:本研究の目的は、第二次世界大戦後の日本および環太平洋島嶼地域における経済開発と開発候補地周辺で暮らす人びとの集合行為についての歴史社会学的分析を主軸に、経済開発の賛成および反対をめぐる集合行為に参与した個々人が遭遇した歴史経験と、その歴史経験が後に個々人の集合行為への参与に有する意味を明らかにするための理論構築を行うことである。その目的に即し、2018年度には主にa)経済開発の賛成および反対をめぐる集合行為に参与した個々人への聞き取り調査およびフィールドワーク、b)調査成果の国際会議"Resisting Empire and Militarization: Reasserting the Sacredness of Seas, Lands and Lives Conference"での発表、c)国際シンポジウム「帝国(間)を巡る人流──多様な帝国的主体の離散と集住」への参加を通じた学習を行った。
②意義と重要性:2018年度の実績である上記のa~cの意義・重要性はそれぞれ以下の通りである。a)聞き取り調査を通じて経済開発の賛成および反対をめぐる集合行為に参与した個々人の歴史経験についての事例を集めそれをもとに、b)国際会議で共有することで理論化を目指したこと。最後にc)については、主に20世紀における北米、満州、台湾、沖縄、日本、奄美、ニューカレドニア、オーストラリアなどの環太平洋地域を横断する主に日本出身者の移動経験の多様な個別具体的事例について学び、複数の異質な帝国間の関係性が変化するなかで、不確定な境界におかれた人びとの経験、主従関係のもとでの主体化を強いられた人びとの逸脱を試みる営みについて検討する視座を得たこと。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は主に(1)文献調査、(2)新聞記事の検討、(3)聞き取り調査およびフィールドワークの3つの量的・質的調査を通じて、離散─移動経験を有する個々人の地域共同体の過去・現在・未来の認識に関する調査を行った。具体的には、①施政権返還後の経済開発に賛成および反対をめぐる集合行為に参与してきた個々人の語りが含まれる機関誌および雑誌・新聞記事などを収集し、②環太平洋島嶼地域間で生起した、経済開発への賛成および反対をめぐる集合行為のネットワークのなかで発行された機関誌および雑誌・新聞記事などについても収集できたが、③1930年代から1940年代の「出稼ぎ」「移民」「出征」「疎開」「避難」のための移動に関する文献および資料群については調査・収集量ともに課題が残った。 聞き取りを通じて記録したデータの書き起こし、および収集した一次資料の分析については複数回の国際学会や研究会での発表・報告を通じて推進できた側面もあるが、論文化が課題として残っている(論文については一部投稿済みで、査読結果待ちである)。
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Strategy for Future Research Activity |
・2019年度は、夏期までに2018年度に記録・収集したデータを整理し、聞き取りの音声記録はすべて書き起こしを終了させ、疑問点を抽出しておくとともに、科研費最終年度までの完成を見込んでいる報告書作成の計画に着手する。 ・夏期までに米国で、1930年代から1940年代の「出稼ぎ」「移民」「出征」「疎開」「避難」のための移動に関する文献および資料群を収集する予定である。特に今年度は、日系・沖縄系2世以降の兵士としての移動経験に関する史資料を収集し、これらの日系・沖縄系2世兵士が戦後の日本・沖縄における役割(とくに占領期の経済開発における役割)について考察する。 ・夏期休業期間中には、兼ねてからコンタクトを試みていた、日本および環太平洋諸島の集合行為のネットワークのなかで活動していた人物(在サイパン)へのインタビューおよびパラオ、グアムで関連資料を収集する予定である。
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Causes of Carryover |
残額分204655円、2019年度に繰り越しを行った理由は報告書の完成・刊行が遅れたためである。調査をもとに今年度~来年度に向けて報告書を完成させる予定である。
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Research Products
(1 results)