2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K12514
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Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
大熊 智之 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 助教 (10804544)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 近代日本 / 「移民者」像 / 拓殖教育 / 移植民学校 / 日本力行会 / 島貫兵太夫 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究では、日本力行会にかかわる資料調査を行った。日本力行会の創設者である島貫兵太夫の言論活動および日本力行会創設にかかわる資料を収集するとともに、日本力行会所蔵の永田文書および渋沢史料館所蔵の大日本海外教育会関係書簡集を調査した。その結果、得られた成果は次の諸点である。 第一に、島貫が力行会の創設に至るまでの過程を理解する上で、彼の対外認識に着目する必要性を確認したことである。対外認識とは具体的には欧米認識と朝鮮認識、およびその両者の関係である。これらが彼の信仰、救貧活動、苦学生支援活動、そして渡米奨励活動とどのように結び付くのかを検討する必要があることを明らかにした。特に彼の朝鮮とのかかわりは従来ほとんど研究されてこなかったが、彼は学生時代に朝鮮で調査を行い、帰国後に盛んに朝鮮伝道論を展開している。その中にはその後の彼の活動の方針にかかわる論点が含まれているだけなく、欧米宣教師への言及も見られ注目に値する。こうした点を丁寧に検討することで、島貫の思想的背景と日本力行会創設期の活動への理解を進めることができる。 第二に、基礎的な資料収集の進展である。日本力行会所蔵資料の調査によって、第二代会長永田稠に関する資料収集を進めることができた。また島貫の師である押川方義らが起こし朝鮮教育を目指した大日本海外教育会関係の資料を渋沢史料館において収集しその目途をつけた。しかしながら、これらはいずれもまとまった資料であり、その分析には相当の時間が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第一に、「植民者」育成を掲げた移植民学校による「植民者」像を相互に比較するという当初計画の成果を論文として公表するに至らなかった。比較する対象の妥当性も含めて次年度以降の課題としたい。しかしながら分析自体は着実に進めており、その成果を学校別にまとめる可能性も含めて、今後公表していくつもりである。 第二に、新たに収集した資料を十分に分析するに至らなかった点である。資料収集自体は当初の計画以上に進んでいる。特に、永田稠関係資料と大日本海外教育会関係のまとまった資料の全容を把握できたことは大きな進展である。しかし、いずれもその分析には相当の時間がかかる。次年度では本格的な分析を進め遅れを挽回したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は以下の通りである。 第一に、これまで分析した成果を公表する。具体的には、当該年度の研究成果の概要として挙げた日本力行会創設者島貫兵太夫がどのように渡米支援をはじめたのかについて文字にして公表する。また、拓殖大学の教育が養成を目指した「植民者」像についてその変遷を分析して、公表したい。 第二に、これまで収集した資料の分析を進める。特に、日本力行会第二代会長である永田稠関係の資料を分析し、設立した学校における教育内容と目指された「移民者」像を明らかにすることを目指す。また大日本海外教育会関係の資料についても島貫にかかわる部分の分析を進める。 第三に、私立の移植民学校における「移民者」像を相対化するために、高等商業学校関係の資料の収集をはじめる。長崎・山口・横浜の各高等商業学校の貿易別科を中心に、それぞれ後身の大学を訪問し同窓会関係の資料や学校一覧、学校史の成果などを収集する。
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Causes of Carryover |
調査をした資料館等の協力により、資料を撮影できる場合が想定より多かったため、複写費用が抑制された。 次年度は長崎・山口・横浜の各高等商業学校に関する資料収集を開始する。そのための旅費および複写費用として使用する予定である。
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