2021 Fiscal Year Annual Research Report
Formation of intellectual relations and political consciousness centered on the Kakunodate area during the 19th
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18K12515
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
天野 真志 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (60583317)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 角館 / 学問需要 / 平田国学 / 秋田藩 / 気吹舎 / 幕末政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの調査・研究活動をまとめ、幕末政治過程における学問・思想の役割について秋田藩内の交流関係を通して分析し、その成果として『幕末の学問・思想と政治運動』を吉川弘文館より刊行した。本書では、研究課題で目的とした角館地域を中核とした知識人の交流関係の解明を石黒家文書等から考察し、そのなかで石黒家が儒学を中心とした学問的ネットワークに関与するとともに平田延胤を始めとした国学者と情報交流を契機に交流を始め、やがて対外認識や政治構想を議論する関係へと発展することを明らかにすることができた。これらの分析を通して、幕末期における政治運動において、学問交流を基軸としたネットワークが存在し、学派を超えた横断的な情報空間を形成していたことが明らかとなった。 また、石黒家文書調査の成果の一つとして、幕末期の石黒家当主である石黒織紀が編纂した風説留を翻刻し、史料集『石黒織紀 膺懲稗史』を製作した。角館地域を中核とした情報交流を象徴する風説留である「膺懲稗史」は、ペリー来航期から明治2年に至る全国の政治情報や秋田藩内の政治議論を膨大に収録しており、当該期の石黒家や角館地域をとりまく政治・思想状況を理解する上で重要な史料である。 最終年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で現地調査を実施することができなかったが、その一方で所蔵者および角館地域における関係者と協力して情報精査を進め、これまで蓄積した史料情報を整理・翻刻することによる成果発信を展開することができた。その結果として史料集を作成して秋田県内の関係者や資料保存機関等に配布し、本研究成果の一部を関連地域に還元するための基盤整備に着することができた。
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Research Products
(3 results)