2021 Fiscal Year Research-status Report
戦後歴史学の史学史的研究―日本中世史研究の政治的性格を中心に―
Project/Area Number |
18K12517
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
呉座 勇一 国際日本文化研究センター, 研究部, 機関研究員 (50642005)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 史学史 / オーラルヒストリー / 戦後歴史学 |
Outline of Annual Research Achievements |
松園潤一朗編『室町・戦国時代の法の世界』(吉川弘文館)に「在地領主法 :「領主制論」的視角の成果と限界」を寄稿した。戦後歴史学の根幹であった「領主制論」的視角の成果と限界について、在地領主法を素材に論じた。在地領主とは、「中世の在地、すなわち農・山・漁村などの生産世界に生活の根拠地をもち、在地民の生産活動に対し強い指導性をもっていた領主層の総称」(『国史大辞典』)である。一般読者がイメージする「武士」と概ね重なる。この在地領主が制定した法を「在地領主法」という。「在地領主法」という研究用語は、幕府や朝廷といった公的・国家的な権力が制定した全国的な法と対照的な、自生的・地域的な法という意味を含んでいる。 また久水俊和編『「室町殿」の時代 安定期室町幕府研究の最前線』(山川出版社)に「幕府と土一揆」を寄稿した。これも戦後歴史学の基調であった階級闘争史観の限界を指摘したものである。応仁の乱が繰り広げられている間、土一揆は京都から姿を消すが、土一揆の原因である飢饉が収束したわけではないし、民衆の暮らしが良くなったわけでもない。生活苦から土一揆に参加して京都で略奪を行っていた人々が、今度は足軽として京都で略奪を行うようになったにすぎない。つまり土一揆の武力が、足軽という形で諸大名に吸収されたのである。応仁の乱は単なる権力闘争、武力抗争ではなく、その底流には、それまで四十年近くにわたって続いた窮民の京都流入という深刻な社会問題があった。室町幕府は度重なる土一揆の蜂起に場当たり的に対処するだけで、食糧問題・貧困問題を解決するための抜本的な対策をとろうとはしなかった。その結果、幕府は応仁の乱という破局を迎えるのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響で国内出張に大きな制約が出ており、聞き取り調査などに支障をきたしている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染収束後、聞き取り調査などを進めていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で予定していた調査が実施できなかったため。新型コロナウイルス感染が収束したら、予定していた調査を実施する。
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