2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12535
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
左近 幸村 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (30609011)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ロシア史 / 海事史 / グローバルヒストリー / 帝国論 |
Outline of Annual Research Achievements |
4月の終わりから5月の頭にかけ、10日間ほどロンドンに出張し、The National Archivesと The British Libraryで史料の閲覧・収集を行った。The National Archivesでは19世紀末から20世紀初頭にかけての英露関係に関する文書を閲覧、複写し、イギリスの外交官から当時のロシアがどのように見えていたのかを確認した。またThe British Libraryでは、スエズ運河に関する重要な先行研究を発見することができた。 6月30日には、東京大学本郷キャンパスで開かれたThe 10th East Asian Conference on Slavic Eurasian Studiesでロシア商船の東地中海航路に関する報告を行い、モスクワ・ロモノソフ大学のソフィア・サロマチナ教授などから、今後に向けての有益な助言を得た。さらに、「海洋/海域と歴史」をテーマとし、11月8日と9日にソウルで開催された第19回日韓・韓日歴史家会議に討論者として出席し、韓国の歴史家と意見を交わした。 刊行物としては、「日露関係史の現在」という座談会を企画し、『ロシア史研究』103号に載せることができた。これは生田美智子、神長英輔、ヤロスラブ・シュラトフ、麓慎一という日露関係史を代表する研究者を揃え、筆者の司会により主要なテーマについて意見交換を行ったものであり、日露関係史がどのような状況にあるか、分かりやすくまとめたものとなっている。 また当該年度は、これまでの研究内容をまとめ、『海のロシア史:ユーラシア帝国の海運と世界経済』として刊行するための準備に費やした。幸いにして同書は、2020年度中に名古屋大学出版会から刊行されることが決まっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ロンドンでの調査を行い、英語での学会報告を行い、単著刊行の目途も立った。単著の中では、これまで以上に、スエズ運河の通航をめぐるロシア政府内の議論や、ロシア商船の歴史について論じている。しかし、ひとつ想定外だったのは、年度末に予定していたペテルブルグでの調査が、コロナのため中止せざるをえなくなったことである。幸い、現在のところ大きな支障はきたしていないが、今後にやや不安も残ることから「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、6月30日から7月3日にかけてポルトガルで開かれるInternational Maritime History Associationの大会と、8月3日から7日にかけてカナダのモントリオールで開かれるICCEESの大会に参加し、スエズ運河とロシアの海運との関係を考察した報告を行う予定だった。しかしいずれの大会も、コロナウイルスのため来年度への延期が発表された。可能ならば、コロナウイルスのため中止した20年度末のロシア出張を、21年度に行いたいと考えているが、これも実現できるか不透明である。 確実なのは、本年度の秋ごろに単著が刊行されることであり、これまでの研究をまとめた同書をめぐっては、反響があることが期待される。21年度前半は単著刊行に力を注ぎ、後半は批評に応答しつつ、そこで指摘された課題をもとに、今後の研究を進めていきたい。
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