2018 Fiscal Year Research-status Report
冷戦初期アメリカにおけるヨーロッパ統合研究の誕生と発展
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18K12537
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高津 智子 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (00807191)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 西洋史 / ヨーロッパ統合史 / 米欧関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の初年度にあたる平成30年度においては、今後の研究活動の基礎固めを行う準備段階という位置づけとして、(1)基礎資料および文献の収集と(2)2年目以降の研究遂行に不可欠な位置維持資料の特定とリストアップの作業を行った。
(1)(2)の作業を行う中で、第二次世界大戦後から1950年代のアメリカにおけるヨーロッパ統合研究の誕生の背景として、「欧州統合思想」の父として知られるクーデンホーフ=カレルギ伯爵が第二次世界大戦中にアメリカに亡命し、ニューヨークを拠点に展開したヨーロッパ統合推進運動と学術研究が重要であったとの知見を得た。これに関して、当時のクーデンホーフ=カレルギ伯爵の活動を支えたアメリカの大学人・財界人のリストを作成し、各人のヨーロッパ統合に関する著作の収集も行ったところである。第二次世界大戦中のこのような米欧の人的ネットワークは、戦後のヨーロッパ統合研究を主導したそれと重なる部分が多いため、今後はその連続性・非連続性についてさらに詳細に検討することを予定している。
また、戦後はアメリカ政府の冷戦戦略の一環として、政府の外交関係者と深いつながりをもっていたハーヴァード大学のC.J.フリードリヒ教授やR.ボウイ教授のもとでヨーロッパ統合研究が組織化していくことになる。そのため、両名が戦時中・戦後に発表した著作についても収集を一通り行い、そのヨーロッパ統合論や冷戦戦略についても分析を終えたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基本資料・文献の作業において本研究に直接的に関連する新たな文献が欧米にて発表されたため、今後の研究計画の微調整を行う必要があったことから、やや研究が遅れている。
ただし、2年目以降に必要な資料の収集や一次史料の特定は完了させており、また現在1年目で得られた知見をもとに論文を執筆中であるため、2年目以降の研究計画はスムーズに進むものと予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の2年目にあたる平成31年度は、1年目に収集を行った基礎資料・文献の確認と分析を続けながらも、研究遂行のためにリストアップをした一次史料の収集・分析を行うことをメインとする。
ヨーロッパ統合は戦後、西ヨーロッパ6ヵ国を中心として具現化・制度化されたものであり、多くの同時代研究が登場したが、その中心的な担い手はアメリカの学者であった。アメリカ政府の対ヨーロッパ戦略・冷戦戦略を下支えするシンクタンク的な役割を果たしたこのようなアメリカの学者たちはヨーロッパ統合を直接的に推進する西ヨーロッパの政治家や官僚と親密な人的ネットワークを構築していたため、まずは一次史料をもとにその内実を明らかにすることに務めたい。
また、1年目に行った基礎・予備調査をもとに、このような米欧間の人的ネットワークがヨーロッパ統合の生成期にいかなる影響を及ぼしたのかを、主に法的な観点から分析することも2年目の課題としたい。
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Causes of Carryover |
基礎資料・文献の収集・分析作業において本研究に直接的に関連する新たな文献が欧米にて発表されたため、今後の研究計画の微調整を行う必要があったことから、渡航による一次史料収集を2年目に延期し、2年目の史料収集がより円滑に進むよう網羅的な史料の特定・リストアップを行ったため。
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