2019 Fiscal Year Research-status Report
冷戦初期アメリカにおけるヨーロッパ統合研究の誕生と発展
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18K12537
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高津 智子 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (00807191)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 西洋史 / 欧州統合 / 冷戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、冷戦初期における欧州統合をめぐる「国家・民間ネットワーク」のケース・スタディとして、ハーヴァード大学におけるヨーロッパ統合研究を取り上げ、その役割と影響を分析することにした。ハーヴァード大学が冷戦初期に政府からの強い関与とバックアップを受けた、ヨーロッパ国際関係研究の一大拠点となっていた。第二次世界大戦後、冷戦の進展に伴い欧州統合の実現がアメリカの国益にとって戦略的に不可欠なものとなると、欧州統合は政治的な重要性を帯びる学問領域となっていった。このような背景から、欧州統合研究の拠点は、政府関係者と強いパイプをもつ法学教授R. ボウイと政治学教授C. J. フリードリヒが在籍するハーヴァード大学へと移り、彼らのもとで発展することになったのである。 2年目にあたる令和元年度においては、同大学におけるこの研究ネットワークの萌芽と成立過程について集中的に分析を行い、以下の点についての知見を得た。まず、彼らは研究者としてのキャリアを積む過程で政府とのつながりをもつようになり、アメリカの対ヨーロッパ政策にコミットする経験を得たのであり、このことが、ハーヴァード大学が欧州統合研究の拠点となった重要な背景の一つだった。このようにして政府や外交政策の決定者との緊密なネットワークの中でスタートし、発展したハーヴァード大学の欧州統合研究グループはアメリカ政府から、あるいはCIAや民間財団などを迂回して資金援助を受けていた。両教授は政府関係者からの要請を受け、1951年にハーヴァード大学に所属する研究者から成るプロジェクトを立ち上げ、西欧で実現されるべき統合構想を具体的に策定していった。同時に、この研究者グループは、西欧の有力政治家が多く所属する統合推進団体と協働することで、実際の統合政策の立案に関与しようと試みたことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響等で予定していた海外の文書館での史料調査ができなかったため、新たな史料の渉猟・入手が予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れている海外での史料調査は令和2年度において集中的に行う予定であるが、新型コロナウイルスの影響で海外渡航が難しい場合も想定して、可能な範囲内で史料のコピーの取り寄せも検討する。 また、本年度の研究内容を総括した草稿を現在執筆中であり、令和2年度においては集中的に論文の投稿等を行い、研究成果の発表に努めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響および体調不良で予定していた海外の文書館での史料調査を先送りしなければならなかったため、次年度使用が生じることとなった。 次年度分と合わせて、史料調査のための費用として使用する予定である。なお、新型コロナウイルスの関係で海外渡航が規制された場合は、史料のコピーの取り寄せのための費用として使用する。
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