2021 Fiscal Year Research-status Report
Comparative study on corporate scandals in Japan, China and Korea
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18K12615
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Research Institution | Hakodate University |
Principal Investigator |
藤原 凛 函館大学, 商学部, 准教授 (40755005)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 法文化 / 厳罰 / 食品安全 / 精密行政 / 機動行政 / 二局行政 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、日本・中国・韓国国の社会システムと法の関係性の解明に注力した。 食品安全分野を例に挙げると、日本の法制動向はグローバルスタンダードに迎合する一方、綿密な行政管轄網と、行政指導中心の行政手法を堅持し、それに伴う行政費用の増大は緩い基準設定で克服、両者のバランスが許容する範囲内で消費者の保護に努める。これに対し、食品安全事犯に対する刑事処罰の水位は低く、国民も処罰より親切な行政を好む法文化が根強く、食品安全に対する信頼も比較的維持されている。そして、日本の食品安全関連の企業不祥事は、法律・行政制度と国民の法文化に大きな乖離が生じたタイミングで、多発する特徴が見られた。 韓国の場合、世界の基準をアジアの周辺諸国に比べていち早く取り入れる特徴を有している。機動性の高い食品安全法制は自ずと頻繁な改正につながり、急激に変化する社会のニーズに応えている一方、拙速な改正ゆえに、法内部ないし法律間の整合性が取れない場合も多く、その都度法改正で対応する。しかし、法改正のたびに刑事処罰は厳しいものとなっていく傾向を示しており、国民はさらなる厳罰化と食の安全に対する不安を併せ持っている。その原因は、韓国の食品安全関連の企業不祥事の主体が、70年代の企業倫理観から脱却できずにいることにあるように思う。グローバルスタンダードを求める国民との克明な対立から生まれた「反大企業」という法文が見えてくる。 最後に中国は、二極化する特徴を見せた。伝統的な異物混入等の場面では、依然経済的インセンティブに基づく故意の犯罪が多発し、死刑も適用できる一方、オンライン食品ビジネスなどに対する法規制、デジタル的管理手法などにおいては、日本を遥かに凌駕するスピードで進化を遂げ、確実に成果を上げている。他方、通報者報償制度など、賛否両論がはっきり分かれる制度も多く、その成敗は今後の国民の法文化の志向に依存すると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中国のアンケート調査、および企業インタビューの外注契約につき、長い交渉の末、7月に締結し、10月の納品を約していたが、調査終了後データの外国搬出許可が下りず、年度末時点で膠着状態が続いている。今後は、委託先の変更を含め、方向修正を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
調査が凍っている中国については、委託先の変更に向けて、現在交渉中である。 その他については、現段階で得られた企業不祥の因果関係の仮説をもとに、エビデンスレベルの高い研究を、段階的に進めていきたい。具体的には、既に集積した実験群と、資本金や業種等の条件が等質な対称群を無作為に抽出し、両郡の企業理念や経営手法、構成員の意識などにつき、比較調査と統計的な検証を行う。
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Causes of Carryover |
中国における調査委託契約が中断し、委託費用を支払うことができなかったため、人件費・謝金が当初計画より減少した。次年度以降、新たな委託先と契約する予定である。
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