2018 Fiscal Year Research-status Report
Impact of political rumor spread on political consequences: Evidence from Text-Mining and Survey Experiment
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18K12707
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
秦 正樹 北九州市立大学, 法学部, 講師 (10792567)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 政治的陰謀論 / 政治的情報 / 代替的事実 / サーベイ実験 / 自然言語処理技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,当初の研究計画にもとづいて,(1)政治的デマの受容メカニズムに関する先行研究の整理・検討,(2)Twitter上に散見される政治的デマに関する言説の収集・分析,(3)世論における政治的デマの受容傾向を明らかにする意識調査(サーベイ実験)を実施した.また,これらの中間段階においては,東京大学・社会科学研究所のワークショップで報告しフィードバックを得た(秦正樹「“普通の人(自称)"が騙される?:サーベイ実験を通じた「反日」言説の受容メカニズムの検証」ISS Political Science Workshop). 本研究は,近年しばしば問題視されるフェイクニュースをはじめとする政治的デマの様相を明らかにし,また政治的デマが受容されるメカニズムを明らかにすることを目的とする.先行研究において,政治的デマはしばしば排外主義的言説と結びつきやすいことが指摘されているが,日本においてもこうした傾向が妥当するかについて,2018年6-7月および10-11月にTwitter上の書き込み(ツイート)を機械的に収集・分析した.分析の結果,日本における政治的デマは「韓国」「在日」「総連」といったエスニック・マイノリティや東アジアを否定するワードと連動して出現する確率が高いことが明らかとなった. また,こうした言説を有権者はどのように受け止めているのかについて,サーベイ実験を2度のプリ調査と1度の全国調査で実施した.社会的な望ましさによるバイアス(SDB)を除去し,より本心に近い回答を引き出すリスト実験を用いて,上記で抽出した政治的デマ言説の受容傾向を分析したところ,(一般的に考えられる経路とは異なり)政治的知識や政治的関心の高い人ほどデマを受容しやすく,とりわけ「私は"普通の日本人"だ」と考える人ほどデマを信じやすい傾向にあることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は,主に以下2つの研究内容を柱として実施した. 第一に,政治的デマに関する情報収集を,2018年6-7月に行った.しかし,Twitter社側のシステム変更(API制限)が行われたことと,同時期に行われたサッカーワールドカップの影響で当初の想定とは異なる状況が生じ,必ずしも安定的なデータ収集を行うことができなかった.ただし2018年10-11月に改めてシステムを見直してデータ収集・分析を行い,当初の研究計画にもとづく研究を進めることができた.なおここでの研究成果は,2019年度中に論文(研究ノート)の形で公刊することを予定している. 第二に,政治的デマの受容メカニズムに関しては,上記の情報収集が遅れたことに伴いプリ調査を2度実施した.7月のプリ調査は(上記の都合で暫定的な分析結果ではあったものの)テキスト分析から得られた結果を用いて,試験的にリスト実験を行った.なおこの結果は東京大学のワークショップで報告し,国内外の研究者から有益なフィードバックを得た.その後,10-11月に収集したテキスト分析の結果の方を用いて,12月に2度目のプリ調査を行った.これら2度のプリ調査の結果および研究会などで得たフィードバックにもとづいて,修正・精緻化した実験デザインを設計し,3月に対象を全国に広げた本調査(サーベイ実験)を行った.この研究成果は,2019年度の日本選挙学会などで報告し,査読付きジャーナルに論文として投稿することを予定している. 以上より,予期せぬ事態は生じたものの,その後の研究計画の見直しにより十分に軌道修正が図れており,2018年度全体でみれば当初の研究計画にしたがって概ね順調に進展したと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,前年度の研究成果の公表(学会報告・論文化)と,政治的デマの内容に踏み込んだより発展的なサーベイ実験(ヴィネット実験)の実施の2本柱で進めていく. まず2018年度に得られた分析結果については,2019年度日本選挙学会での学会報告が既に確定している.また同学会に提出するワーキングペーパーをもとに論文化を進め,早急に査読付きジャーナルに投稿する. また今年度は,2018年度の実験結果を踏まえて,政治的デマの内容にまで踏み込んだ新たなサーベイ実験を行うことも予定している.具体的には,ランダム化要因実験の一種である「ヴィネット実験」を行い,政治的デマを構成するどの部分が有権者を説得する効果を有しているのかを分析する.そうすることで,政治的デマの受容メカニズムに関してより厳密な形で実証的なエビデンスを得るとともに,政治的デマを「なぜ」信じてしまうのかという因果メカニズムについてもより詳細に明らかにすることができる.加えて,新たな実験の結果については,各種研究会などで適宜報告しフィードバックを得るとともに,2020年度以降に国内外の学会での報告やそれにもとづく論文の投稿ができるよう進めていくことを予定している.
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