2019 Fiscal Year Research-status Report
地域医療体制の確立に向けた医療供給者行動の準実験的実証研究
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18K12809
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
高久 玲音 (タカクレオ) 一橋大学, 国際・公共政策大学院, 准教授 (80645086)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 医師の就業行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はデータの取得を進めるとともに、医師の就労状況についてアルトマーク社のデータを用いた基礎的な解析を行った。分析結果によれば、入学段階において高難易度の医学部に入学したものはその後、急性期病院で就労し続けやすく、プライマリーケアを提供する医療機関で就労しにくいことが示唆された。高難易度の医学部に入学したものがどのような市町村で就労するか検討した。その結果、高偏差値大学に入学した医師は、医師免許取得後に急性期病院で働く可能性が高くなり、開業医になりにくいことが分かった。また、在宅医などのコア・プライマリケア医になる確率も低くなっていた。一方、就業場所について医学部の偏差値との相関は見られなかった。また専門医認定を取得する確率が高くなっていた。以上の結果は、医学部の高学歴化が専門内での医師の質を改善することを示唆していた。その一方で、医学部の高偏差値かはプライマリーケア医の不足などの政策課題に対して負の影響を及ぼすことを示している。今後、日本に必要なのは急性期の勤務医と同時に、地域医療をささえるプライマリーケア医であり、その観点から行き過ぎた医学部の高偏差値化を是正する政策も必要である。この研究は、Human resources for health誌に投稿され、アクセプトされた。ただし、アルトマーク社のデータを再購入しようとしたが、資金面の理由で今年度は断念した。妊婦検診の分析については、人口動態調査を解析してみたところ明快な結果が得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研費で行われた研究が1本学術誌(BMC Human Resources for Health)に受理(近刊予定)されるなど、着実な進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については、引き続きアルトマーク社のデータを用いて、当初の予定にはなかったがCOVID19下での医師の行動変化などが把握可能か検討してみたい。本研究班の研究課題名は「地域医療体制の確立に向けた医療供給者行動の準実験的実証研究」であり、実験的な介入の効果を広く医師の就業行動について精査することにある。その点、現在のコロナ禍は地域の医師の行動に大きな影響を与えていると思われる。例えば、アルトマーク社の直近のデータを取得交渉すれば、既に保有しているデータと組み合わせてコロナ禍の影響を明らかにできると予想している。
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Causes of Carryover |
予定していた学会参加がCOVID-19によりキャンセルになった。
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