2018 Fiscal Year Research-status Report
Ethnomethodological Study of Youth Problem Discources in Postwar Japan
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18K12942
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
小川 豊武 昭和女子大学, 人間社会学部, 講師 (80796079)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 若者 / メディア / 社会問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦後日本における「若者」を社会問題化してきた新聞・雑誌・映像等の言説を対象に、それらがいかなる常識的・専門的知識を基盤にして、「社会問題」としての理解可能性を獲得してきたのかを明らかにすることである。近年の日本における「若者」の語られ方をめぐる重要な論点として、①科学的なエビデンス主義の浸透にともなう、通俗的な若者問題化言説への批判の強まり、②少子高齢化にともなう、「若者」を人口規模のみで社会問題化する視点の説得力の低下、が挙げられる。これらの問題状況から、今後の日本社会において「若者」をどのような観点から社会的に重要な問題として捉え、対処していくのかを検討することが喫緊の課題となっている。本研究は、こうした課題に対応するための基礎研究として、戦後日本における若者問題化言説の歴史的変遷を記述することを通して、社会における「若者」カテゴリーの意味を解明し、今後の「若者」への社会的対応を検討するための基礎となる知見を提出することを目指している。 以上の問題関心から、2018年度は①活字メディア(新聞・雑誌・書籍など)、②映像メディア(テレビ番組)における、若者問題化言説を中心に調査および分析を行った。分析の際は、問題化言説の信憑性を解体するのではなく、そのような信憑性が構成される方法の解明を主眼とした。そうすることによって、若者問題化言説の信憑性の基盤を形成している、暗黙の常識的知識を解明することを目指した。 さらに、日本の若者および若者言説の固有性を把握していくために、イギリス・ドイツへ渡航し、現地の若者研究者との研究会・交流会へ参加した。海外の若者のメディア利用、文化状況、労働環境など多様な視点からの研究動向を知ることで、今後の日本の若者言説研究の指針を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①に関しては、「若者」と「メディア」を関連付けた言説、および「若者」と「マーケティング」を関連付けた言説の分析を行った。いずれも、若者問題化言説の主要なパターンの1つであり、これまでは批判的な観点から、「技術決定論」「消費のお客様論」といった分析がなされてきたが、本研究では問題化言説それ自体の志向性に即して、これらの問題化言説が「若者」カテゴリーを用いることを通していかなる社会的実践を行ってきたのかを明らかにした。これらの分析は、2019年度に学術誌に投稿予定である。②に関しては、ある民放の歴史あるテレビドキュメンタリー番組における若者問題化言説の特徴について分析を行った。今回は特に学校における「いじめ自殺」問題を対象に、それらがテレビ番組においてどのように社会問題化されてきたのかに注目した。分析の結果、同番組では単に「自殺」の原因を「いじめ」に帰属させるのではない、様々な番組実践を行っていたことが明らかになった。この分析は、2019年度に共著の学術書として刊行予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はまず、上記①の、「若者」と「メディア」を関連付けた言説、および「若者」と「マーケティング」を関連付けた言説の分析を完了し、早急に学術論文として発表する。それらに加えて、一昨年度までに執筆した論文の改稿を進め、様々な社会的実践における「若者」カテゴリーの意味についての1つの見通しを与えることを目的とした、博士論文の完成を目指す。
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Causes of Carryover |
海外の若者研究者による研究発表会、研究会、交流会への参加のために、イギリスとドイツに出張。当初の予定より多くの研究者との交流が実現し、海外の研究の動向について知る貴重な機会となったが、結果として旅費が超過した。次年度に関しては、調査費用、資料費等で調整し、計画通りの使用に収める予定である。
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