2022 Fiscal Year Research-status Report
ジェンダーの視点から捉える非行からの立ち直り―当事者への追跡調査を通して
Project/Area Number |
18K13101
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
都島 梨紗 岡山県立大学, 保健福祉学部, 講師 (70779909)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 立ち直り / 社会復帰支援 / 追跡調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、これまでにかかわりのある対象者に引き続き調査を継続した。本研究課題では、国際比較を視野に入れていたが、新型コロナウィルス感染症の流行により、海外渡航や調査が難しい状況が続いた。そのため、国内でこれまで関係のある調査対象者を中心として、追跡調査を継続することとした。 先行研究では、女性について、被虐待経験やDV被害や仲間内での暴力被害などを経験していることが指摘されているところである。だが、男性についても暴力被害の経験がインタビューにおいて明らかとなり、関係論的な観点から非行や犯罪を捉える必要性がみられた。そこで、暴力性についての検討を深めるための幅広い文献調査やフィールド調査を行った。調査対象者である、少年院出院者に特有な暴力の経験や、中でも男性と女性の違い、さらに加えて、「私たち」にも親和的で経験される可能性のある暴力の経験との違いなどは、今後検討の余地があると考える。 なお、特に非行少年の被害に注目した成果として、非行経験者の暴力経験の試論的論稿を、書籍の一章としてまとめている。今後、理論的検討を深めて、学術報告につなげていきたい。 また、今年度は女性にアプローチをとる中で、暴力被害が子育て経験にも影響する可能性が見えてきた。女性の少年院出院者については、そもそも母集団が少ないため対象者を募ることは極めて難しい。だが、引き続き女性の出院者に積極的にアプローチを重ねながら、少年院出院者以外の女性にもアプローチをとりながら、彼女らが経験する暴力被害と子育て経験の関連について、検討を深めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症の流行により、インタビュー調査や国際比較調査は遅れていたが、文献研究や、データ整理に時間を費やすことが出来、その成果を学会及び論稿にてまとめることもできた。また、調査対象者への丹念な調査に基づき、被害-加害関係の捉え直しや、暴力構造の背景にある伝統的規範などの概念が重要であることが分かった。今後の研究を発展させる足掛かりとなる調査研究の整理ができている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
男女ともに少年院出院者に経験される「暴力」を鍵概念としながら、国内の調査を進める。幅広い対象に調査研究を行い、非行少年の背景にある被害-加害関係の形成過程について、明らかにする。また、これまでの研究の整理を行うために、国内学会での報告も行う。学会報告したのちに、論文化を目指す。 また、本年度までの調査の知見を踏まえて、女性の出院者に積極的にアプローチを重ねながら、少年院出院者以外の女性も対象にしつつ、彼女らが経験する暴力被害と子育て経験の関連について、検討を深めていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行により、調査の計画が変更となったため、次年度使用額が発生している。使用は、インタビュー調査(国内)とする予定。
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Research Products
(3 results)