2018 Fiscal Year Research-status Report
NHK「みんなのうた」を中心とした日本児童音楽文化の変遷に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
18K13115
|
Research Institution | Seika Women's Junior College |
Principal Investigator |
佐藤 慶治 精華女子短期大学, その他部局等, 講師 (10811565)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | みんなのうた / 国民文化 / 音楽教育史 / 児童文化 / 教育番組 / 小学校音楽教育 / うたごえ運動 / 日本放送協会 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度においては、「みんなのうた」初代チーフ・プロデューサーであった故後藤田純生氏に焦点を当てる形で、国会図書館等での資料調査や論文執筆・学会発表を行った。これらによって、交付申請書に記載していた六つの研究課題のうち、以下の三つを達成できたと言える。 ②戦前に由来する唱歌・童謡:初期の「みんなのうた」では、30曲前後の唱歌・童謡が放送されたが、これらの中には1945~50年代に刊行された児童雑誌に掲載されている楽曲と重複するものが多く存在する。そのような児童雑誌の中には「みんなのうた」という名称がNHKの同番組に先駆けて使用されていたものもあり、GHQ統制下におけるこれらの児童文化と同番組との関連性を分析することにより、GHQ統制下での児童音楽文化再編の延長上に同番組が位置していることを実証した。 ③「うたごえ運動」との関連性:番組初代チーフ・プロデューサーの後藤田氏は、「みんなのうた」が戦後の「うたごえ運動」に触発されたものであるということをその述懐で論じている。新発見の後藤田氏遺稿の分析や、「うたごえ運動」と共通する楽曲との比較分析を行うことにより、「みんなのうた」に内包された「うたごえ運動」と関連する目的意識・精神性を導き出し、また、それが後の学校教育における楽曲の使用につながったということを分析した。 ④西洋楽曲を原曲とする「翻訳歌」:「みんなのうた」では、《線路はつづくよどこまでも》のように、大人向けの西洋楽曲の歌詞を子供向けの歌詞に翻案している楽曲が多く存在する。そのような楽曲と原曲とを比較分析することによって、その差異から戦後民主主義における「健全な子ども像」の創出という番組放送初期の目的を導き出すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国会図書館や放送博物館図書室等で資料収集を行い、これまでの「みんなのうた」研究で触れられていなかった関連資料を見つけることができた。また、「みんなのうた」最初のチーフ・プロデューサーであった後藤田氏について、遺品の資料調査を行い、遺稿や初期番組の楽曲選曲に使用された楽譜群、また番組制作に関する資料等、初期の同番組に関連する重要な資料を発見することが出来た。それを基にして、当該年度においては1本の論文執筆と3回の研究発表を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、5月に初期「みんなのうた」の関係者(当時の元ディレクター、当時の演奏者、当時のファン会会員等)による研究座談会を行う(行った)。これによって、1960年代の「みんなのうた」の制作背景や、当時の番組の受容についての情報を得る。 また、引き続き国会図書館や放送博物館図書室での資料収集、後藤田氏遺品の資料調査を行うとともに、これまで発見した資料の分析を進める(特に、「みんなのうた」放送開始以前より後藤田氏が所有しており番組楽曲の直接の引用元になったと考えられる楽譜群、「みんなのうた」に関連する後藤田氏の直筆を含む論考、1960年代のNHKにおける「みんなのうた」配布用楽譜等)。 研究課題の遂行に関しては、交付申請書における以下の2課題を中心に進める。 ①戦中のNHK関連の国民文化 ⑤「ゼッキーノ・ドーロ」の調査
|
Research Products
(4 results)