2021 Fiscal Year Annual Research Report
The development of the "I don't know" response in early childhood emotion understanding: Relationship to the process of self-emotion understanding.
Project/Area Number |
18K13292
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
近藤 龍彰 富山大学, 学術研究部教育学系, 講師 (50780970)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 幼児期 / 「わからない」反応 / 感情理解 / 自己 / 他者 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は大きく2つの研究を行った。 第一に、幼児期の「わからない」反応の発達的変化、特に「わからない」と言わない認知プロセスを検討した。3~6歳を対象に、答えられない質問に対して「わからない」と回答するかどうか、およびその要因を検討した。その結果、年齢が上がるにつれて「わからない」反応が低下する現象が見られること、その要因として「推測の自覚化」という心理メカニズムが存在すること、が見出された。この研究は、教育心理学研究第70巻第1号に掲載された。この研究は、幼児期の「わからない」反応の基礎的なデータを提供するとともに、「わからない」反応を生み出す認知メカニズムそのものについても示唆を与える知見となっている。特に「わからない」反応が年齢とともに減少するという傾向性は国内外でほとんど着目されておらず、意義ある知見と言える。 第二に、成人期(20歳ごろ)を対象に、自己および他者の感情推測における「わからない」反応を実験法により検討した。高次な認知プロセスを働かせるがゆえに「わからない」反応が見られるという仮説を検証するため、自己の感情推測と他者の感情推測における反応時間や脳波を測定した。その結果、自己と他者を区別した「わからない」反応は成人期にある程度確立して見られること、「わからない」反応はその他の反応よりも反応時間が長いこと、などが示された。現在、データ分析を完了し、雑誌に投稿中である。この結果は、自己‐他者の区別・認識が十分なされたがゆえに他者感情について「わからない」という反応が生じるということを改めて確認する結果であると言える。理論的には、「わからないことが他者理解の1つの形態である」ということを示唆する知見であり、他者の感情が「わかる」ことを軸に検討されてきた「共感」や「心の理解」研究に新たな視点をもたらす理論的重要性が見出せる。
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