2018 Fiscal Year Research-status Report
高解像度シミュレーションを用いた周惑星円盤の形成・進化モデルの構築と衛星形成
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18K13604
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤井 悠里 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (40815164)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 周惑星円盤 / 衛星形成 / ガス惑星 / 輻射流体力学シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、木星のガリレオ衛星のようなガス惑星の衛星系の起源を調べるために、その形成環境であると考えられている周惑星円盤について調べた。 木星は、太陽が生まれた際にその残りのガスによって太陽の周りに形成された原始太陽系円盤の中で生まれ たと考えられている。原始太陽系円盤のガスが木星に流入し、その大気を形成する際には、角運動量の保存から円盤状のガスの流れができる。この円盤は周惑星円盤と呼ばれ、ガリレオ衛星はその中で形成されたと考えられている。よって、ガス惑星の大気や衛星の形成を議論するには、周惑星円盤の理解が必要不可欠である。従来の研究では、惑星近傍が 6000~8000K 以上の高温になると、円盤が形成せずに、ガスが球核状に惑星の周りに分布すると報告されていた。 我々は、輻射流体力学シミュレーションを用いて、原始太陽系円盤の中に置いた木星質量の惑星の重力圏へのガスの流れを調べた。ガスの流入の様子や衛星形成過程を研究するためには、周惑星円盤の温度構造を明らかにする必要がある。本研究では、水素分子の解離や水素・ヘリウム原子の電離を考慮したガスの状態方程式を用いた。シミュレーションの結果、惑星近傍のピーク温度は 10,000K を超えたものの、ケプラー回転に近い周惑星円盤が形成された。この結果から、円盤が形成されるかどうかは、惑星近傍の温度によって単純に決まるものではないということが明らかになった。今後は、さらにシミュレーション結果の解析を進め、周惑星円盤の形成・進化に関する知見を深めるとともに、衛星形成についても議論していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画されていた通り、原始惑星系円盤のグローバル輻射流体力学シミュレーションを行い、円盤内でどのようにガスが木星の重力圏に流れ込むのかを調べた。計算には計画通り、NIRVANA 3.5 コードを用いた。流れ込んだガスの温度分布について調べるために、水素やヘリウムの解離や電離を考慮した状態方程式を用いた。これにより、断熱係数を1.4に固定した断熱近似計算よりも、正しく温度を計算することができた。そして、従来の研究結果に反して、惑星近傍が高温になっても周惑星円盤が形成可能であることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、輻射流体力学シミュレーションで得られた円盤構造から、周惑星円盤のモデル化を行う。そして、その円盤モデルを用いた衛星形成理論を構築する。実際の太陽系内の衛星系のデータと照らし合わせ、理論に制限を与える。
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Causes of Carryover |
本研究の手法である数値計算を行う際のテスト計算及び解析用に中規模の計算機を購入する予定であったが、滞在先のデンマークの計算機が使用可能だったため、購入は次年度に見送った。また、留学費用として所属先から旅費の支援を受けたため、主な出張先であったデンマークでの滞在費を本経費から支出する必要がなかったので、次年度の旅費として有効利用することにした。
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Research Products
(12 results)