2019 Fiscal Year Research-status Report
熱延伸3Dプリンティングによる生体用高分子材料の強化および骨類似機能化
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18K14019
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Research Institution | Yuge National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
福田 英次 弓削商船高等専門学校, 電子機械工学科, 講師 (30536553)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生体用材料 / ポリエーテルエーテルケトン / 3Dプリンター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,生体材料の一種であるポリエーテルエーテルケトンを高い負荷のかかる人工関節においても適用可能な強度に強化することを目的としている. 平成30年度は,一般的な樹脂材料と比較して融点の高いポリエーテルエーテルケトンを溶融するために,400度程度まで加熱できるよう3Dプリンターのヒートノズルを改良した.また,それに伴い,周囲の部品等に耐熱対策を行った.試作造形においては,種々の造形条件(溶融温度,積層ピッチ,走査速度,走査ピッチなど)や造形体と3Dプリンターの土台との定着方法について検討し,概ね3Dモデル通りの形状が造形できる基礎となる造形条件を見出した.その後,基礎となる造形条件を基に,造形条件の1つである造形時の走査速度がポリエーテルエーテルケトン造形体の機械的性質に及ぼす影響について調査した.造形時の走査速度を変化させることで,ポリエーテルエーテルケトン造形体の最大引張強さおよび引張変形強度に変化が認められた. 令和元年度は,ポリエーテルエーテルケトン造形体の強度に影響を及ぼす結晶化度を高めるために,熱処理を施した.造形後のポリエーテルエーテルケトンは,透明度が高く非結晶状態であるのに対して,熱処理を施すことで透明度が低下した.これは,ポリエーテルエーテルケトン造形体の結晶化度が増加してことを意味している.また,熱処理後のポリエーテルエーテルケトン造形体の引張張強度は,熱処理前のそれと比較して1.5倍増加した.造形時の走査速度が増加するに従って熱処理後の引張強度が造形する傾向にあった.しかしながら,走査速度を速くしすぎると,積層間の接着が弱くなり積層間で破断し,強度が低下する.今後,走査速度を速くした状態で,積層間の接着強度を高める方法を考える必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は,ポリエーテルエーテルケトン造形体の結晶化度に重点をおいて研究を実施した.造形条件では,走査速度を遅くするにしたがって造形体の透明度が低下する傾向であったが,完全に透明度がなくなることはなかった.言い換えれば,走査速度を遅くするにしたがって造形体の結晶化度は増加する傾向であったが,著しく結晶化することはなかった.一方,造形後熱処理を施すことで,いずれの造形条件で作製した造形体においても,透明度がなくなり,結晶化度が著しく増加していることがわかった.また,熱処理後の造形体の色は,造形条件に関係なくほぼ同様の色合いであったが,引張強度には差が認められた.以上のことより,令和元年度は,結晶部の結晶化度や配向度を定量的に調査するところまでは進捗していないものの,現在までの進捗状況は,概ね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、3Dプリンターを活用して得られる結晶部の結晶化度および配向度を定量的に調査し,それらが機械的性質(強さ、しなやかさ、延性、衝撃吸収性およびそれらの異方性)に及ぼす影響を明らかにする。(物品費:3Dプリンター用ポリエーテルエーテルケトン素材(前期)、3Dプリンター関連用備品・消耗品(前期・後期)、試験・分析関連用備品・消耗品(前期・後期)/旅費:試験・分析施設での試験・分析(前期・後期)、国内学会発表(後期)/その他:試験・分析装置使用料(前期・後期)など)
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