2018 Fiscal Year Research-status Report
pi-electron materials open up a new horizon for catalytic reactions
Project/Area Number |
18K14209
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北之園 拓 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (50755981)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | π電子材料 / Lewis酸 / 水中反応 / 界面活性剤 / 不斉反応場 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規な疎水場構築法として、ルイス酸触媒とπ電子材料との複合化概念の下、単層カーボンナノチューブ(SWNT)表面を活用する手法を考案し、π電子構造体を活用する新規Lewis酸触媒開発を実証すべく研究を推進している。所属研究室が過去に報告しているLewis酸界面活性剤一体型触媒(LASC)の概念を活用し、ドデシル硫酸アニオンとSWNT表面との相互作用を通じてSWNTおよび金属カチオンの水中高分散を実現し、結果的にπ電子構造体と金属カチオンとの相互作用を基盤とする構想である。このときアニオン性界面活性剤部位を介してSWNT表面にアンカーされるカチオン部位はSWNT表面に広がるπ電子雲からの電子供与を受け電子状態の改変を受けることが期待され、またSWNT表面の強烈な疎水性は疎水性基質や疎水性の不斉配位子を集約するのに好都合であり、ナノチューブ表面を反応場として活用することができると考えられる。すなわち媒体が水である場合に最も効果的であると予測されることから水中反応場という独自の切り口を持ち込み、通常は失活の原因となってしまうアルドキシムなどの配位性基質を用いて活性Lewis酸の特徴を活かした新規触媒的不斉反応を見出すことを主たる目的としていた。各種測定や実験によって触媒系の概念実証に成功し、Science誌に論文発表するに至っている。本研究において初めてカーボンナノチューブを担体以外の目的で有機化学反応に応用することに成功し、また予期した通り反応媒体として水を使用したときのみ高い活性と選択性が得られるという知見を得ている。従来は不斉制御が困難だった新しい光学活性ニトロン化合物の合成手段の開発に繋がっており、反応系可溶化のために一般的に使用される有機溶媒を用いることなく水の利点を存分に活かした結果である。世界的にみても類似の研究例は現在のところ全くなく、独創性の高い研究成果と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種測定法を駆使して当初目的としていた触媒系の概念実証には成功し、論文発表にまで漕ぎ着けることができた。本研究成果はプレスリリースを行った。殊にニッケル錯体側、SWNT側双方において得られた複数の吸収・発光スペクトルデータは想定していた両者間の電子カップリングと矛盾せず、半導体型特有の現象であることを確認できたことは更なる応用を目指す上で極めて重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
SWNTは製法の違いのみならず反応条件の軽微な差によってすら直径やカイラリティの分布が異なるため、分散や吸着の程度も異なり量産されたSWNTを用いて高い触媒活性を得ることは難しい。SWNT分散液評価法の確立を目指す外、他のπ電子材料を用いて安定的に高活性触媒を構築する方法について、現在検討を行っている。
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