2018 Fiscal Year Research-status Report
ユニークな糖代謝から紐解くビフィズス菌と乳児の共生機構
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18K14379
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
阪中 幹祥 石川県立大学, 生物資源環境学部, 特別研究員 (60801892)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ビフィズス菌 / 母乳オリゴ糖 / トランスポーター / 遺伝子破壊 / 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
母乳栄養児の腸管ではビフィズス菌が優勢な細菌叢が形成される。これは、母乳に含まれるオリゴ糖(母乳オリゴ糖)をビフィズス菌が効率良く取り込み・代謝できるためと考えられている。しかしながら、母乳オリゴ糖の取り込みや代謝の分子機構は不明な部分が多い。本研究は、遺伝子操作技術および生化学的技術を駆使して、母乳オリゴ糖の取り込みに関わる新規輸送体をビフィズス菌において同定し、母乳オリゴ糖を介したビフィズス菌と乳児の共生機構を解明することを目的とした。 平成30年度以前に、B. longum subsp. longumの異種発現系を用いて、フコシルラクトース(母乳オリゴ糖の主要成分)の取り込みに関わる二種類の輸送体をBifidobacterium longum subsp. infantisから特定することに成功している。これらの輸送体をそれぞれFL1輸送体およびFL2輸送体と命名した。平成30年度は、これら二種類の輸送体のより詳細な機能を遺伝子操作技術および生化学的技術を用いて解析した。具体的には、当該輸送体について、遺伝子破壊株を用いた母乳オリゴ糖の資化性試験、および、等温滴定型熱量計を用いた母乳オリゴ糖への結合能試験などを行った。その結果、FL1輸送体とFL2輸送体はどちらもフコシルラクトースを主要な基質とする輸送体であるが、FL2輸送体は、FL1輸送体と比較して、より多くの種類の母乳オリゴ糖分子種を取り込めることが明らかとなった。また、FL2輸送体はFL1輸送体と比べて、Bifidobacterium属細菌ゲノムにおいてより広く保存されていることが明らかとなり、FL2輸送体が母乳栄養児腸内でのビフィズス菌優勢な細菌叢の形成に特に重要な役割を果たしていることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Bifidobacterium longum subsp. infantisから二種類の母乳オリゴ糖輸送体を特定し、それらの機能・役割を遺伝子操作技術および生化学的技術を駆使して明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ビフィズス菌由来の新規の母乳オリゴ糖輸送体を引き続き同定していく。また、マウス実験を行い、母乳オリゴ糖輸送体のin vivoでの機能・役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度はフコシルラクトース輸送体とは別の新規母乳オリゴ糖輸送体を特定することができなかったため、遺伝子破壊株作製のために使用する予定であった費用(プライマー代など)を次年度に繰り越した。次年度は、新規母乳オリゴ糖輸送体を特定次第、当該輸送体の遺伝子破壊株を作製する予定である。
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Research Products
(6 results)