2020 Fiscal Year Research-status Report
縮減期の中山間地域での社会的分業に向けた地域資源管理に関するビジネスモデルの構築
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18K14531
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
東口 阿希子 岡山大学, 大学院環境生命科学研究科, 特任助教 (90804188)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地域資源管理 / 中山間地域 / 縮減 / 社会的分業 / 限界集落 |
Outline of Annual Research Achievements |
中山間地域に許容量を超えて生息する野生動物資源の管理を通じて商流を生み出すジビエ利活用に着目し,経営上の課題を抽出するための全国調査を実施した。農林水産省の公表する野生鳥獣食肉処理加工施設のうち宛先の判明した全施設を対象としたアンケート調査を郵送調査法で実施した。 経営状況は,58%が赤字であり,さらにその過半数は総収入が外部調達費を下回る状態であるとわかった。また,全体の52%が食肉処理業と他事業の複合経営体であり,卸売小売業,飲食業,農林水産業の順に多かった。全体の73%を占める民設民営施設に関する分析からは,全体の獣種や搬入量の不安定な外的要因が経営状況に影響を与えること,解体頭数や従事者数の施設規模,搬入量に対する稼働率や販売量,商品の価格設定などの内的要因も赤字要因となっていることが明らかになった。 施設の経営改善には,獣種や搬入量に合わせた労働及び資本の調節や,販売先の需要に合わせた価格設定及び販売方法の工夫が有効だと考えられる。また,複合経営体や副業・兼業としての施設経営では,他事業間や従事者の余力に合わせた労働の調節が可能である点,さらに施設経営の赤字を他事業や主業の収益でカバーできる点から,外的要因の影響縮小に有効であり,持続的な施設経営が期待できると示唆された。全体の7割を占める民設民営の食肉処理施設の経営破綻を防ぐため,政策目的を遵守する公営施設と,ビジネスとしての健全性を追求する私営施設の棲み分けを検討すべきと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染リスク拡大へ配慮し,ヒアリング調査の多くを延期せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染リスク拡大へ配慮のため実施できなかったヒアリング調査について,調査内容・手法の変更を検討する。郵送調査法を用いたアンケートへと切り替え,仮想評価法やコンジョイント分析を活用し,地域資源管理の委託に対する支払意思額を明らかにする。受託側の各種団体・事業者に対するヒアリング調査は,新型コロナウィルスの感染リスクが低下して以降に実施することとする。また,学会発表や学術雑誌への投稿も行い,研究成果の公表に努める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス対策として,県外や新規の調査対象者へのヒアリング調査を断念せざるを得なかったため,旅費や調査補助に係る謝金等の費用に大きな残額が発生した。繰越した予算については,令和3年度に実施する住民アンケート調査等に使用し,状況が許し次第ヒアリング調査へも使用する。
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Research Products
(1 results)