2021 Fiscal Year Research-status Report
縮減期の中山間地域での社会的分業に向けた地域資源管理に関するビジネスモデルの構築
Project/Area Number |
18K14531
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
東口 阿希子 岡山大学, 環境生命科学学域, 助教 (90804188)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 地域資源管理 / 中山間地域 / 縮減 / ため池 |
Outline of Annual Research Achievements |
多数のため池を有する中間農業集落を事例に,担い手減少によるため池管理の粗放化の実態を明らかにし,水田集約による管理労力削減効果を評価した。対象集落は,9つのため池を含む13水系を利用し42.5haの水田を経営していた。しかし,受益農地の水稲耕作率は平均45.1%と低く,うち2水系は農業用水利用がほとんどなく管理のみが継続されていた。ため池管理の担い手減少率は,水田所有者全員が耕作者であった頃を基準とすると平均37.5%であり,85歳を管理限界としても10年後の担い手減少率は現在の38.8%と推計された。管理労力削減のため,非耕作の水田所有者もため池管理の担い手に加えるルール変更や水路のパイプライン化の対応が一部の水系でみられた。しかし多くの水系で,水利権者や耕作者の把握が役員の記憶に頼る状態であること,水利組合内外での情報共有がないこと,所有地は守るべきという強い意識から管理対象の削減や農地集約を忌避する傾向が強いという課題が見られた。 ため池および水路管理の労力増大要因から,堤体面積・提体斜度・水路距離・車両侵入不可距離に着目し,GISを用いて現状の水稲耕作面積を維持し水路距離および提体面積を最小化する水田の最適配置を検討した。水系別の水田集約モデルでは,水系あたり31.7~100.0%の労力を削減できたが,水稲耕作率が高いまたは既に集約状態の水系では労力削減は得られなかった。水系全体での水田集約モデルでは,管理対象のため池を半減し,堤体で平均43.0%,水路で平均62.6%の労力を削減できた。また,担い手数が38.8%減少する10年後においても,1人当たりの管理労力は堤体で平均6.9%,水路で平均39.0%といずれも削減できると試算された。ただし,耕地移動に対する強い抵抗を示す住民が存在するため,水田集約の実現には住民の意識改善や危機意識の醸成が不可欠である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染リスク拡大へ配慮し,延期せざるを得ない県外調査やヒアリング調査があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染リスク拡大へ配慮のため実施できなかった調査について,調査対象・手法の変更を検討する。郵送調査法を用いたアンケートや県内のヒアリング調査を実施することとする。また,学会発表や学術雑誌への投稿も行い,研究成果の公表に努める。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス対策として,県外や新規の調査対象者へのヒアリング調査を断念せざるを得なかったため,旅費や調査補助に係る謝金等の費用に大きな残額が発生した。繰越した予算については,令和4年度に実施する現地調査の旅費や住民アンケート調査費用等に使用する。
|
Research Products
(4 results)