2018 Fiscal Year Research-status Report
Regulation mechanisms of metamorphosis depending to crowded condition
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18K14796
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
栂 浩平 日本大学, 文理学部, 助手 (10726798)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境応答 / 混み合い / 変態制御 / RNAi / ジャイアントミルワーム |
Outline of Annual Research Achievements |
一部の昆虫では,混み合い条件では変態(幼虫から蛹を経て成虫へ至る過程)が抑制され,混み合いから解放されると変態する現象が知られる.混み合いと言う環境要因を認識し,発生過程を可塑的に変化させることを可能にする機構はどのようなものだろうか.本研究では混み合いによる変態抑制に関わる発生遺伝学的な機構を明らかにするため,以下の解析を行った. ツヤケシオオゴミムシダマシの幼虫は集団飼育条件では変態しないが,隔離飼育によって変態が促進される.隔離後に集団飼育に移すと変態を抑制できることがわかった.昆虫の変態は幼若ホルモン量の低下と脱皮ホルモンの分泌によって促進される.これらに関連する遺伝子の発現解析を行ったところ,脱皮ホルモン関連の遺伝子が混み合いに移行後に発現が低下していることがわかった.脱皮ホルモン(20-Hydroxyecdysone)の注射によって混み合い条件でも変態が促進されたことも合わせると,混み合いは脱皮ホルモンの上昇を抑制する効果があることがわかった.一方で,混み合い条件における幼若ホルモン関連の遺伝子の発現の上昇に有意な差は見られなかった.しかし,発現は混み合い条件で上昇している傾向にあるため,詳細な解析が必要と考えられる.これまで変態の抑制は幼若ホルモンによる抑制が一般的に知られているが,混み合いによる変態抑制は脱皮ホルモンの制御によって達成されることを示した. 混み合いによって発現が変動する遺伝子を探索するため,隔離条件と混み合い条件で飼育した幼虫を用いて,RNAシーケンス解析を行った.その結果,混み合いで発現が上昇もしくは減少する遺伝子を22個見つけた.今後は,これらの遺伝子をRNAiによりノックダウンし,混み合い条件での飼育でも変態してしまう遺伝子かどうかを検証する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は混み合いの効果を検証するための飼育環境の整備や,変態にかかる日数など基礎的な情報を集め,その後RNAシーケンス解析により候補遺伝子の探索と機能解析を行う予定であった.予定通り変態に対する混み合いの効果を観察する飼育実験系を確立できた.これを利用し,遺伝子発現解析やホルモンの操作実験を行えることも検証できた.また,この実験系を利用して,RNAシーケンス解析により混み合いに応答する遺伝子の探索も行うことができた.現在,これらの遺伝子のRNAiによる機能解析を進行させているところである.以上より,順調に研究を進展させることができたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,明らかにした候補遺伝子の詳細な機能を明らかにするため,RNAiによる機能解析を行う.先ずは,RNAiにより混み合い条件でも変態を促進可能かどうかに関して,注射するdsRNAの濃度,タイミング等を検証する.その後は,目的の遺伝子に対して,変態するかしないかだけでなく,ホルモン関連の遺伝子発現に影響を与えるかどうかなど,発生学的,分子生物学的なアプローチによりRNAiの効果を検証する.変態制御に関わる遺伝子を同定できた場合は,コクヌストモドキ(混み合いにより変態が抑制されない種)を用いて,RNAiによる機能解析を行う.これにより,同定した遺伝子は混み合いによる変態制御に特異的に関わる遺伝子なのかどうかを明らかにする.また,ジャイアントミルワームやコクヌストモドキのような甲虫類だけでなく,キイロショウジョウバエなど様々な分類群の昆虫において,同定した遺伝子の機能の解析を行う.これらの解析を通して,混み合いに応答した変態抑制の進化発生機構を考察する.また,組織特異性を明らかにすることで,混み合い効果はどの器官を介して応答するのかを明らかにする.
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Causes of Carryover |
次世代シーケンサーによるRNAシーケンス解析が,当初の見込みより安く行うことができたため,次年度使用額が生じた.. 次年度は混み合いに応答して発現が変動する遺伝子について機能解析を行うが,前年度には行わなかった詳細な発現量解析や,発現部位の解析も行う予定である.また,次年度はこれまで用いていなかったコクヌストモドキやキイロショウジョウバエや,他の非モデル昆虫を用いて,混み合いに応答した変態機構に関する進化発生機構を明らかにする.生じた次年度使用額はこれらの研究を遂行するための昆虫購入費用,専用の試薬およびキット類の購入に充てる.また,次年度は混み合いはどの器官を介して応答反応が起こるのかを明らかにする計画であり,次世代シーケンサーを用いたRNAシーケンス解析で網羅的に明らかにする.
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Research Products
(4 results)