2018 Fiscal Year Research-status Report
Time window of NMDA receptor-dependent LTP in memory formation and consolidation
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18K14818
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 明弘 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (10741332)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | LTP / sLTP / cofilin / CALI |
Outline of Annual Research Achievements |
光によるスパインのsLTP解除 光でCofilinを不活化するためには、光照射により活性酸素を産生し近傍(5-10 nm)に存在する蛋白質等を不活化できる技術であるCALIを導入した。SuperNova (SN) は1光子500~600 nm及び2光子(~800, 1000~nm)励起によって高効率でCALIを誘導できる。そこでSNと Cofilinの融合蛋白質(Cofilin-SN)をスライス培養海馬神経細胞のspineに発現させた。二光子グルタミン酸刺激によって単一スパインにsLTP誘導し、その10分後にスライス全体に光を照射すると、sLTPが誘導されたスパインだけが縮小し、sLTPを誘導していないspineには影響がなかった。sLTPの誘導1分前、50分後の光照射ではそれぞれ影響がなかった。以上の性質を利用することによって、脳における可塑性の時間枠を探索することが可能であると考えた。 LTPの抑制を脳内で行うために、Cofilin-SNをCaMKII-Creマウス両側海馬CA1の錐体細胞に発現させ、海馬直上に光ファイバーを挿入した。記憶の評価はIAテストを用いた。マウスを明室に入れると、マウスは暗い場所を好む性質があるため、通常1分以内に暗室に入る。暗室に入った後、電気刺激を加える。この時点で、恐怖条件づけの記憶が誘導されると想定される。翌日再び明箱にマウスを入れ、暗箱に入るまでの時間を計測する。電気刺激によりLTPが誘導され記憶が形成されれば、暗箱へ入るまでの時間が遅延する。記憶タスク2-20分後に光照射を行うと記憶が消去された。一方で記憶タスク60分以降、1分前に光照射行ってもそれぞれの記憶に影響はなかった。以上から、本手法によって学習後40分後までの光照射でLTPが解除され、LTPの時間枠探索が可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに、chromophore-assisted light inactivation (CALI)を用い,光にてコフィリンを不活化することで、海馬長期増強(LTP)を起こしたシナプスを特異的に 解除する技術を確立した。さらにIn vivoでLTPの抑制を行うために、AAVにより海馬CA1神経細胞でCofilin-SNを発現させ、光ファイバーを通じて海馬に光照射した。記憶はInhibitoryAvoidance (IA) testにより検討した。記憶が形成されたと想定される電気ショックの2-20分後にCALIを行うとDay2での遅滞時間が解消した。以上から、光照射に よりCofilinを不活化する本手法は、LTPを特異的に解除可能な新たな光操作技術であり、この手法を用いることで脳内において可塑性が起きる時間枠を特定することが可能となる。以上から、記憶における可塑性の時間枠の同定を目指す課題はおおむね順調に進んでいると言える。さらにこれまでに開発した技術を用いることで、可塑性の時間枠を具体的に同定することを今後はさらに目指していく。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに開発した技術を用いることで脳内において可塑性が起きる時間枠を特定することが可能となる。さらにこれまでに開発した技術を用いることで、可塑性の時間枠を具体的に同定することを今後はさらに目指していく。具体的には海馬において記憶の形成、想起、固定化の前後の様々なタイミングで光を照射することで、可塑性が起きている時間枠を同定する。さらに、海馬からの入力があり、記憶の固定化に関与している皮質においても同様の実験を行うことで、脳の領域間における記憶可塑性のダイナミズムを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
動物(マウス)の繁殖が予定通りに進まずに、昨年度に計画していた実験(IAテストによる行動実験)が、昨年度に実行することができず、それらの実験を次年度に実行する必要が生じたため。
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