2018 Fiscal Year Research-status Report
モノアミン神経系とエピジェネティクスに着目した漢方薬の抗うつ作用メカニズム解析
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18K14941
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
荒木 良太 摂南大学, 薬学部, 講師 (90710682)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セロトニン / 漢方薬 / フェルラ酸 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は基礎的研究から、不眠症や神経症に対して用いられる漢方薬である加味温胆湯が抗うつ様作用を示すことを見出している。本研究では、加味温胆湯の抗うつ様作用の作用機序について、細胞外モノアミン量を指標に解析を行った。In vivo脳微小透析法を用いて加味温胆湯が大脳皮質前頭前野の細胞外モノアミン量に及ぼす影響について解析したところ、ノルアドレナリン量とドパミン量には変動が見られなかったが、細胞外セロトニン量は加味温胆湯の投与40分後をピークとした一過的な増加が観察された。一方で、酸棗仁湯においても細胞外モノアミン量に及ぼす影響について解析を行ったが、ノルアドレナリン量、ドパミン量、セロトニン量のいずれにおいても変動は見られなかった。また、加味温胆湯の抗うつ様作用は、セロトニン5-HT1B受容体アンタゴニストの前投与により消失したことから、抗うつ様作用には細胞外セロトニン量の増加による5-HT1B受容体の刺激が関与するものと考えられた。また、細胞外セロトニン量増加作用に関与する加味温胆湯の構成生薬を同定するために、加味温胆湯の構成生薬から一味抜き取った処方が細胞外セロトニン量に及ぼす影響について解析した結果、チクジョ抜き処方において細胞外セロトニン量増加作用の減少が見られた。しかしながら、チクジョエキス単独では細胞外セロトニン量の増加が見られなかったことから、加味温胆湯の細胞外セロトニン増加作用にはチクジョと他の生薬との組み合わせが重要である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は漢方薬である加味温胆湯の細胞外セロトニン量増加作用を見出した。こうした作用は他の漢方薬では見られないことや、細胞外セロトニン量増加作用にはチクジョが重要であることを明らかにしたため、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、チクジョが細胞外セロトニン量を増加させる機序を追究する。また、当帰などのセリ科の生薬などに含まれているフェルラ酸のモノアミン受容体への作用の解析と、GDNF遺伝子のDNAメチル化に対する漢方薬の作用も解析する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は消耗品費の多くを占めるルシフェラーゼアッセイやエピジェネティクス解析を行わず、行動薬理学的解析および神経化学的解析を集中して行ったため、当初の予定より使用金額が少なくなった。次年度は、本年度に行わなかったルシフェラーゼアッセイやエピジェネティクス解析を集中して行う予定である。
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Research Products
(4 results)