2019 Fiscal Year Research-status Report
大規模医療情報データベースを用いたがん患者と心疾患患者の精神疾患の比較研究
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18K15416
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 泉美 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (20726971)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | がん / 抗精神病薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,全国レベルのリアルワールドでの医療情報データベースを利用し,がん患者の精神問題について精神科系薬剤の処方に関連する因子が患者の予後に及ぼす影響の解明だけでなく,他の3大疾患である心疾患患者での精神科系薬剤の処方実態と,処方関連因子の予後への影響を比較してがん患者での特徴の明確化し,わが国のデータベースの疫学研究や医薬品評価への利活用方法を提案し,わが国の医療政策や医薬品の安全監視への利用促進に貢献することである。特定の因子の有無あるいは組み合わせががん患者の予後に及ぼす影響を解明することにより,当該の因子を持つ患者への早期介入や精神ケア等の改善対策が促され,結果的にがんの治療結果の向上や医療費の削減につなげられる可能性がある。また,他疾患との比較により,がん患者独自の精神問題の特徴,あるいは他疾患共通の特徴を把握することが可能であり,それぞれの疾患での精神的な問題に対応するための一助となり得る。研究には前述の通り,医療情報データベースを用いる。これらは医療情報の既存データの2次利用であり,適切に評価するためには,各データ構造と各疾患の理解,及びこれらを考慮した手法(欠測,経時的データの扱いや疾患定義,解析モデル,疾患間比較等を複合的に設定)を要する。そのため申請者は,事前にデータベースの構造(変数やコード等を含む)や特性の理解,適切な試験デザイン・解析の選択,コードの選定,解析プログラムなどを準備する。精神科系薬剤はがん患者のせん妄や吐き気等に処方されることがあり致死的な悪性症候群を引き起こすことがある。抗精神病薬の使用にあたり注意すべき有害事象であることからデータベース研究でその発生を調べる前にシステマティックレビューで現状を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
データベース研究の前段階のシステマティックレビューにとどまった。次に,データベース研究で抗精神病薬による影響を死亡を含めた有害事象の発生で評価する予定である。いくつかあるデータベースから,若年層や高齢層の,がん患者,心不全患者など,それぞれのコホートに合ったデータベースを選択する。複数使うことも想定している。また,心不全患者の分類や病期の分類をデータベース研究で実施するために,データベース上にある既存の情報を使って分類する方法を検討中である。こちらは全国レベルでなく,1つの県全体でのデータベースを使い,地域の特性,併存疾患,併用薬なども心不全の病期等の分類に従って,疫学的な解析を実施する予定である。さらに,心不全患者でもがん患者と同様の抗精神病薬の死亡を含めた有害事象の評価の検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
システマティックレビューでは予想以上に致死的な有害事象は少なく,抗精神病薬の有害事象による致死的な症例は少ないようであった。そのため,稀で致死的な有害事象だけでなく,さらに広げて抗精神病薬特有かつ,がん治療の妨げになるような有害事象の評価の検討を進める。また,がん患者との比較のため,心不全患者の分類を臨床的な側面から検討している。病期はガイドライン等で示されているが,線引きがあいまいであり,疫学的に病期の集団を示すことに難渋している。データベースを用いての分類方法や,臨床的に意義のあるまたは,わかりやすい分類方法を検討して,それらを基に,併存疾患,併用薬,緩和について統計学的手法を用いて疫学的な結果を示す予定である。
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Causes of Carryover |
本年は実質的に実施した研究がデータベース研究ではなく,レビュー研究であったため,データベースにかかる費用が掛からなかった。また,予定していた国際学会の渡航を断念するなどしたために,旅費もかかっていない。論文作成も,レビュー研究のみにとどまったため,英文校正費もかからなかった。本年は,データベース研究を実施するために,データベース研究に必要な物品,英文校正,国内外の学会参加,また,研究協力者との会議もより活発になる事が予想されるため,ミーティングにかかる費用も生じる予定である。しかし,コロナ問題の状況もあることから,国内外の学会参加は困難になる事が考えられる。
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Research Products
(1 results)