2018 Fiscal Year Research-status Report
下肢動脈バイパスに応用可能な小口径再生型ロング人工血管の開発
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18K16293
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
古越 真耶 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 客員研究員 (20739247)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重症下肢虚血 / 血管グラフト / 小口径人工血管 / 再生医療技術 / 生体内組織形成術 / バイオチューブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究題目である下肢動脈バイパスに用いるための十分な長さを有し、かつ小口径のバイオチューブを作製するための鋳型の設計および作製を行なった。本研究で用いるiBTAの技術は生体皮下に鋳型を埋め込み、4~8週間の受け込み期間中に生体をバイオリアクターとして利用することで組織体を得る組織工学技術である。本研究では30cm以上の長さを有する人工血管バイオチューブが必要であり、生体に埋め込む際の鋳型の形状に工夫が必要であった。そこで渦巻き状にした鋳型をさらに直径10~15cmの円盤状に設計し、内腔はシリコーンの心棒を内蔵した空洞状とした。これをヤギおよびビーグルの皮下に8週間埋め込み、その後取り出すと鋳型内に渦巻き状の組織体が形成されており、これを伸ばすと25~50cmのバイオチューブが得られた。鋳型内に細胞が均一に入り込むよう鋳型の側面にスリット孔を設けているが、この位置により組織の形成具合が不均一に形成される場合がみられたため、スリット孔の最適な位置を決定するため均一に組織体が形成されるまで鋳型の設計・生体皮下への埋め込み・取り出したバイオチューブの品質試験として水圧試験を実施し、一定の水圧をかけたのち破綻もしくは組織の形成が不十分な箇所がないかを確認するという一連の過程を繰り返し実施した。 品質を確認し移植に使用できると判断したバイオチューブを用い、ビーグル頸動脈のバイパス移植実験を行い、移植短期の評価までを本年度は行なった。移植したバイオチューブは動脈圧に耐え、移植1週間後の血管造影では狭窄や膨化などの異常はみられず開存を維持した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年度は、下肢動脈バイパスに用いることが可能な長さを有する人工血管バイオチューブを作製するための鋳型の設計を中心に行い、作製した鋳型を実際に生体皮下に埋め込み20cm以上の長さを有するバイオチューブを作製することが課題であった。これまでの研究では小口径ではあるものの長さは最大で10cm程度であり、下肢動脈バイパスに用いるには不十分であった。その理由として生体に埋め込む際の鋳型はすべて直線状の形状であったため、長いバイオチューブを作製する際に直線状の鋳型では生体への埋め込みは不適切であった。そこで、鋳型の設計を工夫し、これまで用いてきたバイオチューブを作製するための筒状の鋳型のコンセプトはそのまま利用し、さらにこれを渦巻き状にまとめて円盤型の鋳型を開発した。本年度はこの新たな鋳型を用いて長いバイオチューブを作製することが可能であるか実証することを課題として実験計画をたてていた。現在までの段階で設計した鋳型を用いて最長50cmのバイオチューブを作製することが可能となり、計画通りに進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
長いバイオチューブを作製することが可能となった現在、次のステップとして実際に動物移植実験を行い、末梢血管バイパスモデルを作製してバイオチューブの開存性、耐圧性、および組織のリモデリングが全長においてみられるかを評価する。ビーグルやヤギを用いてバイパスモデルを作製する。 移植後は血管造影およびドップラーエコーにて移植したバイオチューブの形状、生体血管との吻合部の狭窄の有無、バイオチューブ内の血流の評価を行う。評価は移植後1週間から開始し、1ヶ月ごとに血管造影およびドップラーエコーを実施して評価する。観察期間としては1ヶ月から3ヶ月までの短期・中期評価、および半年以上の長期評価を設定しているが、実験動物の状態および移植後の開存性によって適宜観察期間を調節する。特に開存性が期待通りの結果を得られない場合はモデル動物および移植手技を見直し、必要に応じて移植方法を検討しなおす。
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Causes of Carryover |
当該年度は実験課題である長いバイオチューブ作製のための鋳型開発を中心に研究を行なった。鋳型開発費に見込んだ費用より実際に必要となった費用が少なかったこと、また動物実験に使用した費用も予定よりも少なかったため本年度は次年度使用額が発生している。次年度は動物実験を中心に行う予定であり、実際の移植に使用する薬品、手術消耗品、動物の管理費等に多く費用が必要となるため、計画的に研究費を使用する予定である。
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