2018 Fiscal Year Research-status Report
放射線誘発線維症における非コードRNAを介した作用機序の解明と治療への応用
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18K16425
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
矢野 博之 大分大学, 全学研究推進機構, 教務職員 (50448552)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 放射線誘発線維症 / 長鎖非コードRNA / miRNA / コラーゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、放射線誘発線維症における転写調節機構、及び細胞内シグナル伝達経路等の遺伝子発現メカニズムの解析することを研究目的としている。我々は、これまでに、細胞外マトリックスの主成分であるI型コラーゲンについて、放射線により発現が増加し、その発現増加にTGF-β/Smadシグナル伝達が関与すること、そして、転写後の遺伝子発現を調整するmiRNAについて、miR-29が、放射線によるI型コラーゲン発現増加に関与することを報告した。さらに、放射線誘発線維症における遺伝子発現メカニズムを調べるために、miRNAと競合して転写後の遺伝子調節に関与する長鎖非コードRNA(lncRNA)に着目し、放射線誘発線維症に関与するlncRNAについて調べた。 マウス線維芽細胞株NIH‐3T3細胞を用いて、lncRNA array解析、及びreal-time PCRにより、網羅的に放射線により発現が変動するlncRNAを調べた結果、放射線により発現が2倍以上亢進した13種のlncRNA、および0.5倍以下に低下した47種のlncRNAを得られた。放射線により発現低下したlncRNAの中には、肝線維化との関連が報告されているH19やガン関連遺伝子との関与が報告されているlncRNA-Xがあった。これら2種のlncRNAの機能を調べるためにsiRNAを用いた阻害実験を行ったところ、H19の阻害では、放射線によるI型コラーゲンの発現増加が緩和され、一方、lncRNA-Xの阻害では、より顕著になった。 今後はこれらのlncRNAについて過剰発現実験等を行い、lncRNAによるコラーゲン遺伝子の発現調節、及びmiRNAとの競合作用について解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線誘発線維症への関与が考えられるlncRNAの同定について、lncRNA microarray、及びreal-time PCRにより解析は順調に進んでいる。また、ノックダウン実験により、lncRNAの機能解析を進めている。また、lncRNAとmiRNAとの競合作用について検討するために、現在、lncRNA、及びmiRNAに関するコンストラクトの作成を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きlncRNAの機能解析を調べるために、培養細胞を用いて過剰発現実験等を進める。また、lncRNAとmiRNAとの競合作用について調べるために、それぞれ各種のノックダウン実験、及び過剰発現実験を行う。 生体内レベルでのlncRNA、及びmiRNAの放射線誘発線維症への関与について調べるためにマウスを用い、主にウェスタンブロッティング、及び免疫組織観察等により、タンパク質レベルでの作用について調べる。
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Causes of Carryover |
研究の進行状況に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。 詳細として、ウェスタンブロッティングについて、複数の標的遺伝子を当初予定していたが、30年度は1種類の遺伝子のみだったため、抗体の未購入等によりに未使用額が生じた。 31年度は、その他複数の標的遺伝子を想定して各種抗体を購入し、タンパク質レベルの作用についての研究を実施する。
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