2019 Fiscal Year Research-status Report
放射線誘発線維症における非コードRNAを介した作用機序の解明と治療への応用
Project/Area Number |
18K16425
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
矢野 博之 大分大学, 全学研究推進機構, 教務職員 (50448552)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放射線誘発線維症 / コラーゲン / lncRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、放射線誘発線維症に関連する遺伝子発現メカニズムを解析することを研究目的とし、これまでに、細胞外マトリックスの主成分であるI型コラーゲンについて、TGF-β/Smad3シグナル伝達とその応答因子であるCTGFを介して放射線により発現が増加することを明らかにした。また、非コードRNAの一種であるmiRNAについて、放射線誘発線維症にmiR-29、miR-26が関与することが分かった。 本研究は、放射線による転写後の遺伝子発現調節についてさらなる知見を得るために、miRNAと競合して転写後の遺伝子発現調節に関与するlncRNAについて調べること目的とする。 本年度は、マウスの肺組織から単離した肺線維芽細胞およびマウス線維芽細胞株NIH-3T3培養細胞について、発現ベクターを用いた過剰発現、及びsiRNAを用いた阻害実験を行い、以下の結論を得た。 lncRNAの一種であるlncRNA-Xを過剰発現させた場合、I型コラーゲンの発現が減少し、放射線によるI型コラーゲンの増加が抑制された。しかし、抑制型smadであるsmad7の発現は増加した。一方、lncRNA-Xを阻害させた場合、I型コラーゲンの発現が増加し、放射線によるI型コラーゲンの発現増加がより一層顕著になったが、smad7の発現は減少した。 これらの結果により、RIFに係る放射線によるI型コラーゲン発現増加にlncRNA-Xが関与すること、さらにlncRNA-XによるI型コラーゲンの発現減少にsmad7が競合していることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
lncRNA-Xとsmad7の相互作用を明らかにするために、lncRNA-Xおよびsmad7 3'UTRのレポーター遺伝子コンストラクトの作製を試みているが、コンストラクトの完成に時間がかかっており、smad7の発現調整にlncRNA-Xが関与しているか検討できていない。 また、lncRNA-Xとsmad7の相互作用について、互いに競合しうるmiRNAの同定を試みているが、コンピューター上でのmiRNAの解析が進んでいない。 CRISPRシステムを用いてlncRNA-Xノックダウン実験を検討し、lncRNA-Xノックダウンベクターを作製したが、その機能についての実験が現在進行中であり、stableなlncRNA-Xノックダウン細胞株の樹立が完成していない。
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Strategy for Future Research Activity |
lncRNA-Xおよびsmad7 3'UTRのレポーター遺伝子コンストラクトの作製がほぼ完成しており、Luciferase assayによりlncRNA-Xおよびsmad7の3'UTR活性を測定し、smad7の発現調整にlncRNA-Xが関与するか調べる。次に、その結果より、lncRNA-XおよびSmad7に作用しうるmiRNAを同定し、それらlncRNA-Xおよびsmad7の発現を調整しうるmiRNAの過剰発現および阻害実験を行い、RIFにおける線維化形成を阻害するmiRNAについて調べる。 また、CRISPRシステムを用いてstableなlncRNA-Xノックダウン細胞株の樹立を完成させ、RIFにlncRNA-Xが関与するか調べる。
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Causes of Carryover |
当初予定していたlncRNA-Xとsmad7の相互作用について、lncRNA-Xおよびsmad7 3'UTRのレポーター遺伝子コンストラクトの作製に時間がかかり、smad7の発現調整にlncRNA-Xが関与しているか検討できていない。また、lncRNA-Xとsmad7の相互作用について、互いに競合しうるmiRNAの同定を試みているが、コンピューター上でのmiRNAの解析が進んでいない。CRISPRシステムを用いたlncRNA-Xノックダウンについて、lncRNA-Xノックダウンベクターを作製し、その機能の確認中のため、stableなlncRNA-Xノックダウン細胞株の樹立が完成していない。 また、所属施設が2019年度より施設改修およびその準備のため放射線照射実験およびRIトレーサー実験が行えない。そのため、放射線照射実験およびRIトレーサー実験については次年度に行う必要が生じた。 以上の実験進行上の遅れおよび施設改修の理由により、予算を繰り越すこととした。
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