2021 Fiscal Year Research-status Report
放射線誘発線維症における非コードRNAを介した作用機序の解明と治療への応用
Project/Area Number |
18K16425
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
矢野 博之 大分大学, 研究マネジメント機構, 教務職員 (50448552)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放射線誘発線維症 / コラーゲン / lncRNA / miRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線誘発線維症(RIF)は、放射線治療によっておこる重篤な合併症であり、我々はこれまでにRIFプロセスに関する遺伝子発現メカニズムの解析を進めてきた。特に、細胞外マトリックスの主成分であるI型コラーゲンの転写後レベルでの発現調整ついて、TGF-βやその応答因子であるCTGFが重要な因子であること、そして非コードRNAであり、遺伝子の発現を負に制御するmiRNAとして、miR-29及びmiR-26が転写後レベルでのI型コラーゲン発現調整に関与することを明らかにした。 本研究では、転写後のRIF発現メカニズムについてさらに調べるために、miRNAと競合して転写後の遺伝子発現調節に関与するlncRNAに着目している。昨年度までにRIFに関与するlncRNAとしてlncRNA-X、そしてlncRNA-Xと競合しうるmiRNAとしてmiR-Aを見出した。本年度はRIFプロセスにおけるmiR-Aの機能的役割について調べ、以下の結論を得た。まず、miR-Aの機能を調べるために過剰発現実験を行った結果、miR-A過剰発現により、lncRNA-Xの発現が抑制された。さらに、抑制型smadであるSmad7への影響を調べた結果、miR-Aの過剰発現により、Smad7の発現が抑制された。一方、miR-Aの過剰発現によりI型コラーゲンの発現は増加した。これらの結果により、lncRNA-XがmiR-Aと相互作用してSmad7の発現を調整し、放射線によるI型コラーゲン発現増加に関与することが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
lncRNA-X及びmiR-AとSmad7の相互作用を明らかにするために、lncRNA-X及びmiR-Aの阻害実験を検討している。lncRNA-Xの阻害実験について、CRISPRシステムを検討し、現在、CRISPRプラスミドを作製し、培養細胞にトランスフェクションさせて、CRISPRプラスミドの有効性について調べている。有効性を確認でき次第、lncRNA-Xのstableなノックダウン細胞株の樹立を目指したい。miR-Aの阻害実験についても同じく、CRISPRシステムを検討しているが、CRISPRプラスミドの作製に時間がかかっており、有効性を確認できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
CRISPRシステムを用いてstableなlncRNA-Xのノックダウン細胞株の樹立を目指す。lncRNA-Xノックダウン細胞株が樹立できたら、コラーゲン等の遺伝子発現レベル及びタンパク産生レベルを調べて、lncRNA-XがRIFにおける線維化形成をどのように調整するか、評価する。同時にmiR-A のstableなノックダウン細胞株の樹立を目指し、lncRNA-XとmiR-AのRIF間の相互作用について調べる。
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Causes of Carryover |
当初予定していたCRISPRシステムを用いたmiR-Aノックダウンについて、現在、miRN-Aノックダウンベクターを作製し、その機能を確認中のため、stableなmiRN-Aノックダウン細胞株の樹立が完成していない。そのため、2021年度に予定していた放射線照射実験およびRIトレーサー実験が行えず、これらの実験については次年度に行う必要が生じた。 以上の実験進行上の遅れにより、予算を繰り越すこととした。
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