2022 Fiscal Year Research-status Report
脊髄後角シナプス伝達における生体内D-セリンの 機能解明
Project/Area Number |
18K16462
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
加藤 永子 獨協医科大学, 医学部, 助教 (10721897)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Serine racemase / Spinal dorsal horn / Spinal nerve ligation / Whole-cell recording / NMDA receptor |
Outline of Annual Research Achievements |
神経障害性痛は多様な症状を引き起こす難治性の慢性疼痛である。神経障害性痛の発症メカニズムの解明とその鎮痛法の開発は世界的に重要な課題である。 本研究では、中枢神経系の興奮性シナプス伝達に重要な役割を果たしているN-メチル-D-アスパラギン酸型グルタミン酸受容体(NMDA受容体)のコ・アゴニストであるD-セリンが、生体内において痛みの発生機序にどのように機能しているかを解明するため、その合成酵素であるセリンラセマーゼ(SR)のノックアウト(KO)マウスを用い、侵害受容性刺激に対する応答や、脊髄後角表層細胞のシナプス伝達の変化を、行動学的、電気生理学的に検証している。 本年度は、末梢神経を結紮すると機械的アロディニアが増強されるSR-KOマウスの行動学的表現型をシナプス伝達レベルで裏付けるための研究を引き続き行った。末梢神経結紮7-14日後のマウス脊髄切片標本を用い、脊髄後角表層ニューロンからホールセル(全細胞)パッチクランプ法により興奮性シナプス後電流(EPSCs)を記録した。しかしながら、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により研究代表者のその他業務の増加によって研究計画遂行に遅れが生じた。EPSCsのNMDA/non-NMNMD比や、減衰相における時定数の解析等を現在も遂行中である。EPSCsの波形のキネティクスはチャネルの特性を示す。したがって、電気生理学的な本研究成果をもとに、NMDA受容体を構成する各種サブユニットの発現変化の検証へと、研究を展開させていくことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、SR-KOマウスは末梢神経が障害されていない状態でも、脊髄後角のNMDA受容体を介した興奮性シナプス伝達が増強していること、 SR-KOマウスは末梢神経結紮を行うと機械刺激による痛みに対して感受性が増大することを明らかにしてきた。 本年度はSR-KOマウスの末梢神経結紮による機械的アロディニアの増強を裏付けるため、末梢神経結紮を施したSR-KOマウスにおける脊髄後角の興奮性シナプス伝達変化について、脊髄切片標本を用いた電気生理学的解析を引き続き進めた。しかしながら、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、その他業務に費やす時間が通常より増加したため研究計画遂行に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
末梢神経結紮を施したSR-KOマウスおよびコントロール群の脊髄後角表層神経細胞から記録したEPSCsについて、NMDA/non-NMNMD比と時定数τについて解析を進めていく。また、末梢神経未結紮のマウスとの比較検証を行う。NMDA受容体にはいくつかのサブユニットがあり、受容体のサブユニット構成の違いはチャネルの透過性を特徴づけ、NMDA-EPSCsの減衰時定数の増加や減少に反映することが明らかにされている。したがって、電気生理学的な研究成果をもとに、NMDA受容体を構成する各種サブユニットの発現変化の検証へと、研究を展開させていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響によって研究遂行に遅れが生じたため、また当初参加を予定していた学会のオンライン開催への変更等があり、旅費の使用額が予定より少なかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、電気生理学的解析及び分子生物学的解析を進展させるため、記録に必要な試薬や器具等の消耗品の購入に充当し研究を推進させる予定である。
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