2018 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子多型による化学療法後末梢神経障害の感受性の相違
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18K16478
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 果林 京都大学, 医学研究科, 助教 (70782639)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 末梢神経障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗がん剤治療による末梢神経障害(CIPN)は発症機序に不明な点が多く、未だに有効な予防法・治療法が存在しない。CIPNは患者のQuality of life(QOL)を著しく低下させ、抗がん剤の投与量減少や治療中止を余儀なくされることがあるため、CIPNの予防・治療法の確立は急務である。申請者らはCIPNの患者から採取した血液より次世代シーケンサーを用いた全エキソーム解析を行うことで、CIPNのしびれ・痛み感受性に関する遺伝子多型を発見し、同一レジュメで行った場合にも生じる神経障害の重症度・感受性相違の個人差の原因を明らかにすることを目標とする。 当科では化学療法施行後の末梢神経障害で通院中の患者のしびれ症状の緩和のためにメコバラミン等のビタミンB12製剤や漢方薬の牛車腎気丸等、疼痛に対してはプレガバリンやヂュロキセチン、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗不整脈薬や副腎皮質ステロイド等が用いている。 これらの治療にも関わらず症状が増悪している患者についてピックアップを行うことができた。患者は30代~70代、基礎疾患は乳がん、子宮体癌、S状結腸癌、横行結腸癌、肺がん、骨髄腫、急性リンパ性白血病等であり、化学療法として使用した薬剤はパクリタキセル、シクロフォスファミド、シスプラチン、ゲムシタビンなど多岐にわたる。このなかでCTCAEⅡ~Ⅲを変動している患者について検討を行っている。末梢神経障害について感覚鈍麻(hypesthesia)、異常感覚(dysesthesia:刺激なし、paresthesia:刺激あり)、感覚脱失(anesthesia)、感覚過敏(hyperesthesia, allodynia)に分け、化学療法ごとに軸索障害(axnopathy)、神経細胞体障害(neuronopathy) 、軸索障害(myelinopathy)に分類した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、末梢神経障害の評価は他の神経疾患(ギランバレー症候群や傍腫瘍性ニュロパチー、炎症性脱髄性多発神経炎等)を鑑別した上で問診と身体診察所見に加え、知覚検査や腱反射、神経伝導速度検査等を行うことで診断するが、これらの検査は煩雑な上に、神経障害の早期予見や投与量調節の判断基準にはならない。化学療法後の末梢神経障害については患者の自己申告に基づいて行われている。対象患者をCTCAE Ⅲ以上の患者としたが、現在CTCAEⅢ程度に増悪するまで放置されている患者は少なく、悪化する以前に化学療法が変更されたり減量される方針である。 自己申告に基づく重症度分類のみでは研究に必要腰な患者数を確保することが困難である可能性もあるため、その他の基準についても慎重に検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
末梢神経障害の評価に米国 National Cancer Institute(NCI)の作成した 有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events/CTCAE)v4.0、Debiopharm社 神経症状-感覚性毒性基準 (DEB-NTC)を用いる。この基準は患者の主観的な表現であり、さらに聴取した医療者の解釈が加わり、過小評価する傾向にあることが指摘されているため(National Cancer Institute. Common Terminology Criteria for Adverse Event http://ctep.cancer.gov/)、これに加えて患者のセルフアセスメントツールとしてFunctional Assessment of Cancer Therapy-Neurotoxicity(FACT-NTX)、visual analogue scale(VAS)を用いる。もともと感覚障害または知覚不全がある患者、糖尿病合併患者は除外し、抗がん剤施行中にCTCAEでGrade Ⅲ以上、DEB-NTCでGrade Ⅲ以上、FACT-NTXが化学療法開始後に3以上上昇、VAS 30以上上昇するCIPNを発症した患者をリクルートする。 上記の診断基準では不十分な可能性があり、温度覚、振動覚、モノフィラメントによる刺激、冷覚刺激、タッチパネルでの反応時間の遅延など複数の指標を組み合わせることも考慮している。 患者のリクルート作業が完了すれば、順次遺伝子解析を行っていく。
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Causes of Carryover |
遺伝子解析を行うための予算であったが、当該解析についてまとめて行った方が安価で済む可能性があり(現在交渉中)、本年度分の遺伝子解析を保留しているところである。このため検査代が残っている状況であるが、まとめて行う時に保留分の検査代全てを使用する予定である。
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