2018 Fiscal Year Research-status Report
骨芽細胞周期の開始を制御するカルシウム依存性Kチャネルの調節機構解明
Project/Area Number |
18K17012
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀 元英 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (60815330)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 骨芽細胞 / 細胞周期 / IKチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
骨粗鬆症は国内の患者数が1300万人に達し、骨折の増加から寝たきりになるなどQOLの低下に直結する病気である。現在までに骨粗鬆症を予防・治療する薬物が開発されてきたが、骨吸収を抑制するだけでなく、骨産生を増強する薬物があれば併用することにより、より生理的な骨量の増加が期待される。そのためには骨芽細胞の増殖・分化の制御機構を詳細に解析する必要があるが、細胞膜電位変化による増殖制御メカニズムは未だに明らかとなっていない。本研究は骨芽細胞において、カルシウム依存性Kチャネルの一つであるIK (Intermediate-conductance Ca2+-activated K+)チャネルが細胞周期の開始を制御することにより細胞増殖しているのではないかと仮説を立て研究を行うことにより、骨芽細胞の詳細な増殖機構を明らかとすることを目的とした。細胞は骨芽細胞株であるMC3T3-E1を用いてフローサイトメトリー法により細胞周期を推定した。何も処置をしていないMC3T3-E1細胞に対して、IKチャネルの活性化作用を持つ薬物を添加したものではS期の細胞の割合が増加することが明らかとなった。このことはIKチャネルがG1期からS期への細胞周期移行時に何か役割を果たしていることを示唆している。しかしながらこのS期の細胞の増加率は低くまだ確証を得るには不十分と考える。今後は細胞周期同期法をさらに検討すること、さらには電気生理学的手法を併用することによりもっと詳しくG1/S期の制御におけるIKチャネルの役割を明らかとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フローサイトメトリー法によるMC3T3-E1細胞の細胞周期解析においてIKチャネルの活性化によりS期の細胞が増加する知見を得ることができた。しかしながら増加率はまだまだ低く確実にIKチャネルが関与しているかを明らかとするには不足している。また、IKチャネルの阻害剤の適用では明確な差は見られなかった。これらのことは細胞周期の同期操作がまだ不十分であるためと考えられる。また、各細胞周期におけるIKチャネルの発現割合の変動などは見ることができていないので今後検討したい。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞周期の同期方法を見直してより明確に細胞周期のステージを分離し、各周期におけるIKチャネルの発現量の変化を定量的に解析する。具体的には細胞周期の同期法を見直し、よりG1/S期への移行が評価しやすい実験系を使用する。その後フローサイトメーターを使用して各細胞周期ごとの細胞集団を分画してそれらよりmRNAを回収、real-time PCR法によりIKチャネルの発現量を定量化する。IKチャネルのactivator, inhibitorを使用することにより細胞周期に変化が出るかを探り、IKチャネルの関与を明らかとする。これと同時に電気生理学的手法を行うためには生細胞で細胞周期を同定する必要があるため、細胞周期を可視化する方法の検討も行い、細胞周期にIKチャネルがどのようにかかわるかを明らかとする。
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Causes of Carryover |
当該年度では細胞周期ごとに分けた細胞におけるIKチャネルの発現量の変化を測定すると同時に電気生理学的手法を用いて活性の測定を行う計画をしていた。しかしながら生細胞を用いてのフローサイトメトリー法には困難が伴い、あまりうまく進んでいない。次年度はこれまでとは違うアプローチ(生細胞で細胞周期を区別する染色薬)や、遺伝子ベースの細胞周期指示タンパク質(FUCCI)などの導入をすることにより、細胞周期におけるIKチャネルの役割を明らかとする。
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