2020 Fiscal Year Research-status Report
腸管関連リンパ組織内共生細菌アルカリゲネスによる免疫制御機能の解明
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18K17997
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
細見 晃司 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ワクチン・アジュバント研究センター, 研究員 (00755762)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 共生 / 一酸化窒素 / アルカリゲネス / 腸管免疫 / アジュバント / LPS |
Outline of Annual Research Achievements |
腸内細菌を介した免疫制御は、アレルギーなどの免疫疾患や糖尿病などの生活習慣病など様々な疾患に関わっていることが分かり、健康科学における新潮流となっている。我々は、腸管管腔だけではなくパイエル板などの腸管リンパ組織の内部にも細菌が共生していることを明らかにし「組織内共生」という新概念を提唱してきた。 本年度は、アルカリゲネスの共生メカニズムの解明、さらにそのユニーク性に着目したアジュバントへの応用について研究を進めた。共生メカニズムとして、アルカリゲネスの主要な菌体成分であるリポポリサッカライド(LPS)がユニークな構造を有し、TLR4に対する弱いアゴニスト活性をもつことを明らかにした。このため、アルカリゲネスLPSは炎症の惹起につながるような一酸化窒素の誘導能が低いことも明らかになった。このため、アルカリゲネスはパイエル板組織内で樹状細胞に補足されても細胞内で排除されることなく、共生関係を築くことができると考えられる。 また、アルカリゲネス由来LPSは、樹状細胞などの免疫系を適度に活性化するが、過剰な炎症は惹起しないという特徴をもっており、この免疫活性化作用はアジュバントとして理想的であると考えられる。そこで、アルカリゲネス由来のLPSならびにLPSの活性中心であるリピドAのアジュバントとしての有効性を検証した。その結果、実験的モデル抗原である卵白アルブミンを用いた検討から、LPSやLipid Aが抗原特異的な抗体産生やT細胞応答などの免疫応答を増強できることを明らかにした。また、肺炎球菌に対する経鼻ワクチンとしても著名な副反応を呈することなく免疫応答を増強し、肺炎球菌の呼吸器感染に対する感染防御効果を高めることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の通り、アルカリゲネスと樹状細胞の共培養系を用いた解析から、アルカリゲネスが炎症を惹起せずに共生できるメカニズムを明らかにした。さらに、この知見をアジュバント開発研究へ展開し、その有効性を示すことができたことから、当初の目的である基礎学術的なメカニズム解明に加えて、これらの知見を応用的な研究へ発展できたことから、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
LPSやリピドAの構造の違いが、アルカリゲネスの共生メカニズムを理解し、免疫学的ユニーク性を紐解く鍵であることが示唆されたことから、構造活性相関などより詳細な検討を進めるとともに、アジュバント応用についてはより実用化に向けた検討を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
当該年度は当初の予定よりも使用するマウスの数を減らすことができたため、物品費を安く抑えることができたためである。次年度にはこの予算を使用することでより網羅的な解析を進めたいと考えている。
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