2020 Fiscal Year Research-status Report
仮想通貨Bitcoinにおける取引履歴の解析による使用目的の識別と関連性の解明
Project/Area Number |
18K18162
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
豊田 健太郎 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 訪問助教 (60723476)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ブロックチェーン解析 / メカニズムデザイン / Bitcoin / Ethereum |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績は主に2つある。1つ目は、ブロックチェーンのサイズの増加に伴い、仮想通貨の取引履歴解析を効率的に行うために分散学習を用いるための基盤研究である。より正確には、仮想通貨の取引履歴解析の分散学習のためにフェデレーションラーニング (FL: Federated Learning) を用い、さらに参加者もしくは学習協力者に仮想通貨によるインセンティブを配布するメカニズムを提案した。掲載論文においては、コンテスト理論 (contest thoery) と呼ばれるオークション理論の1つを用い、提案メカニズムにより参加者は自身の計算資源およびデータを全て用いることが利得を最大にすること、また最適なインセンティブ分配割合について明らかにした。 2つ目の成果は、1つ目の提案に用いるEthereumブロックチェーンの処理速度を向上するために、その性能的なボトルネックを明らかにする研究に取り組んだ。多くのユーザがgolangで開発されたgethと呼ばれるクライアントを用いてEthereumを起動していることに着目し、pprofと呼ばれるgolangの並列処理およびヒープタイムなどを計測するツールおよび自前の関数を用いて明らかにした。複数の同一ネットワークに接続するサーバ上にこれらのツールを配置し、具体的にgethのどの関数がどこでどの程度処理時間を要するかを計測し、gethのボトルネックとなっている点を関数レベルで明らかにした。 上記の成果は仮想通貨Bitcoinにおける取引履歴の解析をより高速に処理するために極めて重要な成果と言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仮想通貨の取引履歴解析を効率的に行うために分散学習を用いるための基盤研究に関して、コンテスト理論 (contest thoery) と呼ばれるオークション理論の1つを用い、提案メカニズムにより参加者は自身の計算資源およびデータを全て用いることが利得を最大にすること、また最適なインセンティブ分配割合について明らかにした。さらに提案に用いるEthereumブロックチェーンの処理速度を向上するために、ブロックチェーンを管理するノード (geth: go Ethereum)の性能的なボトルネックが公開鍵をメッセージに含まれる署名から復元する過程にあること、さらに並列処理が効率的に働いていないことを明らかにした。これらの成果は国際論文誌IEEE Accessにそれぞれ採録され、順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、主に2つの研究に取り組む。1つ目は本年度の研究で明らかになったgethのボトルネックをより精査し、それの性能改善に関する研究である。2つ目は仮想通貨の取引履歴解析のオンライン化に関する研究である。これは近年の仮想通貨の取引量の急増に伴い、リアルタイムに解析を行う需要が高まっているためである。
|
Causes of Carryover |
COVID-19の流行により予定していた国際学会参加を取り止めたため、見込みよりも使用額が少なかった。次年度は、COVID-19の状況に応じて別の国際会議の参加を検討するか、研究成果を論文誌に投稿し、その掲載料に使用する予定である。さらに近年の仮想通貨の取引量の急増に伴い、より高性能のワークステーションが必要であり、これを購入する予定である。
|