2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K18331
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| Research Institution | Kyoto University |
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Principal Investigator |
福井 佑介 京都大学, 教育学研究科, 講師 (20759493)
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| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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| Keywords | 図書館情報学 / 図書館史 / 社会的責任 / 知的自由 / 公立図書館 / 差別図書 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦後図書館界の社会的責任の歴史的展開を明らかにし、その構図を整理することである。これは、激変する社会環境の中で、公立図書館には、多様な役割や機能が期待されているという現状を踏まえた研究課題である。このことを歴史的な文脈な中で相対化して検討するために、図書館と社会との関係性を包括的に検討する。本年度は、1960年代以降を対象としていた計画に従って、以下の研究を行った。
(1)社会的責任論に関わる意見表明および討論の場として機能した全国図書館大会について、前年度に社会的責任論の観点から通史をまとめた。特に、1960年以降は、社会的・政治的な動向から図書館界は一定の距離をとり、公立図書館の戦後改革に関連する事項に集中するようになったことを明らかにした。この基礎的理解の上に、関連する史料や議論の検討を通じて、資料提供を通じた社会保障を目指すという社会的責任論の興隆を確認した。
(2)1970年代以降に、理念的であった社会的責任論が現実から問われ直すことになる。その象徴的な事例として、差別図書として批判を受けた童話『ピノキオ』に関する名古屋市図書館の取り組みを検討した。当該図書館による3年間の取り組みを実証的に明らかにするために、名古屋市図書館に残された一次史料を調査したり、当事者への接触を試みたりした。
(3)『ピノキオ』問題や名古屋市図書館の取り組みを図書館界がどのように受け止めたのかということについても調査を行った。特に、議論の主戦場となった図書館問題研究会に焦点をあて、当事者へのインタビューと史料の分析を行った。その結果、図書館活動から指導性を排し、無条件の貸出を保障するという規範と、現実に制約された中での前例のない取り組みを通じて、市民的合意の形成を目指したという評価の間で、葛藤が生じていたことが明らかになった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、研究計画で示していた中心的な課題について、研究実績の概要で述べたように、おおむね目標を達成することができた。計画では、「1960年代から1970年代初頭」と「1970年代後半以降」に分けて、課題を設定していた。両者にかかわって、1960年代以降の図書館実践や図書館界の議論に詳しい当事者へのインタビュー調査を行うことができた。また、前者については、動向を史料で跡付けた。後者については、2019年9月から11月にかけて、名古屋市図書館や当事者との接触を通じて一次史料を入手することができた。ただし、2020年3月に予定していた再度の資料調査については、コロナ禍の影響で実施することができなかった。まだ研究を深めるべき側面も残されている一方で、実証的に明らかにできた範囲で、口頭発表を行ったり、論文を執筆・公表したりすることができた。
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| Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は、各論の発表と総括を行う。
・各論：これまで行ってきた研究を洗練させながら、個別論文の発表を継続する。さらに、残された調査についても、社会的状況や調査相手の事情に最大限の配慮を行いながら、慎重に進める予定である。
・総論：プロジェクトの総括には、大きく2つの方向性がある。第1に、これまでの成果を踏まえて、社会的責任論に関わる戦後の展開を通史としてまとめることである。第2に、そこから析出された図書館の社会的責任論に関わる構図をモデルとして提示することである。成果全体を単著の研究書としてまとめ、刊行することを目標とする。
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| Causes of Carryover |
年度末に予定していた資料調査や発表をコロナ禍の影響で断念したために、関連する旅費や複写費などが次年度使用となった。社会的状況や調査協力者の事情に十分に配慮しながら、次年度の研究遂行のために使用する。
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Research Products
(2 results)
