2018 Fiscal Year Research-status Report
高齢者居住環境における感染症予防と微生物汚染探索法としてエンドトキシン評価の提案
Project/Area Number |
18K18467
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
金 勲 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (00454033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳 宇 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (50370945)
Lim Eunsu 東洋大学, 理工学部, 准教授 (50614624)
林 基哉 国立保健医療科学院, その他部局等, 統括研究官 (40320600)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 高齢者 / 細菌 / エンドトキシン / 感染症 / DNA解析 / 室内環境 / 高齢者施設 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、培養法が基本となっている細菌汚染評価法に対して、より迅速かつ再現性及び定量性が高い評価手法として、真正細菌の殆どを占めるグラム陰性菌が産生するエンドトキシン(Endotoxin;内毒素、以下ET)を測定することを提案し、その活用性と実用性を探索することで空気経由の感染症及び微生物汚染を定量的に評価し、感染症予防と環境改善に資することを目的とする。 実施項目は、①室内空気中ET濃度の実態把握、②培養法及び遺伝子分析法による細菌濃度の測定、③ET濃度と細菌濃度の相関を調べ、ET測定による室内細菌汚染度の評価法を探索、である。 特別養護老人ホームを対象に北海道4施設、仙台6施設を選定し、2018年11月(北海道4件)、2019年3月(仙台5件、北海道3件)に室内計36カ所の濃度測定を行った。測定項目はET、浮遊真菌・細菌、DNA解析、測定箇所は寝室2室、共用空間1カ所、外気である。空調がされているオフィスは1EU/m3以下が多く見られるが、高齢者施設でも多くの部屋で1~2EU/m3以下の濃度が見られた。しかし、1施設では寝室、共用部共に16.9~48.4Eの非常に高い濃度が検出され、I/O比(外気濃度と対する室内濃度の比)も14.6~41.7と非常に高い。施設全体に影響している汚染源があると考えられた。 住宅に関しては寝室とリビングのハウスダストを採取し、室内汚染度を調べると共に室内環境と居住者健康に関するアンケートを実施している。2018年度に51軒の協力を得て、濃度分析を終え得ている。ダスト中ET濃度は5000EU/g未満が40カ所、5000~10000が31カ所、10000~20000が22カ所、20000~30000が5カ所、30000超過が4カ所であり、平均9,710±11,861EU/g、中央値6,010、最大80,349となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下項目で研究を進めている。1)測定対象の選定と現場調査(金、イム、林)、2)エンドトキシン試料の採取と濃度分析(金、イム)、3)居住環境及び室内環境の解析(イム、林)、4)培養法・遺伝子分析法による細菌濃度測定(柳)、5)相関分析(金) 特別養護老人ホームを対象に北海道4施設、仙台6施設を選定し、2018年11月(北海道4件)、2019年3月(仙台5件、北海道3件)に室内計36カ所の濃度測定を行った。測定項目はET、浮遊真菌・細菌、DNA解析、測定箇所は寝室2室、共用空間1カ所、外気である。 住宅に関しては寝室とリビングのハウスダストを採取し、室内汚染度を調べると共に室内環境と居住者健康に関するアンケートを実施している。2018年度に51軒の協力を得て、ハウスダスト102試料の濃度分析を終え得ている。 空気測定時にはDNA解析用試料の捕集も同時に行っており、解析結果を待っている。2年目にET濃度、浮遊細菌濃度との比較を行い、ET濃度と浮遊細菌濃度との相関と現場測定の有効性を示す。また、アンケートによる居住環境と居住者健康データは室内ET濃度と相関分析を行う予定である。 高齢者福祉施設や高齢者住宅など高齢者居住環境における感染症予防と微生物汚染探索法として従来の培養法の短所を克服するための測定法としてエンドトキシンの活用と実用性を探る、高齢者のQOLと健康維持のための重要な研究である。本研究による高齢者居住環境における日和見感染など細菌汚染の迅速な測定が可能になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目には引き続き北海道・仙台の高齢者施設を追跡調査すると共に、関東や関西圏に所在する施設を調査する。また、ハウスダストの収集を続けるが、更に高齢者が居住する住宅を選定して空気濃度を測定する予定である。 また、ET濃度、浮遊細菌濃度、DNA解析結果との比較を行い、ET濃度と浮遊細菌濃度との相関と現場測定の有効性を示す。アンケートによる居住環境と居住者健康データは室内ET濃度と相関分析を行う。2年目(最終年度)は以下の内容で研究を進める。 1)測定対象の選定と現場調査(金、イム、林):調査は住居形態を問わず高齢者福祉施設と高齢者が居住する住宅などを対象としている。建物概要や居住環境について設問と観察調査をする。室内環境因子として居住形態、建築年数、結露、掃除状況、冷暖房方式、換気、ペット、ダンプネス、カビ臭などを調べる。2)エンドトキシン試料の採取と濃度分析(金、イム):今までの研究により空気捕集法とフィルター選定、分析法などを確立している。MCEフィルター、吸引引流量100L(3.3L/min)、カイネティック比濁法。3)居住環境及び室内環境の解析(イム、林):住宅における室内環境因子として居住環境(イム)、生活パターン、冷暖房換気設備、ペット、ダンプネスなどを調べ、集計とお統計解析を行う。施設(林)においては温度・湿度・CO2センサーを設置し、長期連続測定を行い、温熱環境及び換気状況を把握する。4)培養法・遺伝子分析法による細菌濃度測定(柳):SCD培地による培養法、DNA分析(費用関係上ET試料の1~2割程度)。5)相関分析(金):以上の結果をまとめ、高齢者居住空間における空気中ET濃度の実態を把握するとともに細菌汚染との相関分析(SAS- JMP11)を行う。 ET濃度を室内空間の細菌汚染度の測定と評価法として提案するための基礎的なエビデンスとして活用する。
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Causes of Carryover |
萌芽研究の初年度は交付決定と研究開始の次期が遅く、実測対象物件の手配・交渉に時間を要するため、実質的に現場実測などが始まったのは11月以降となった。本研究に必要な備品・装置などは既に備わっているため、研究費はET濃度分析用ライセート試薬、DNA解析用試薬など試薬代と出張費が殆どとなる。 そのため、初年度の使用額が少なくなり、2年目以降の分析用試薬及び消耗品と旅費に回すことになった。
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