2019 Fiscal Year Research-status Report
ピアノ演奏におけるフレージングの意図伝達と個性表出に関する研究
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18K18491
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Research Institution | Soai University |
Principal Investigator |
橋田 光代 相愛大学, 音楽学部, 准教授 (20421282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片寄 晴弘 関西学院大学, 理工学部, 教授 (70294303)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | フレーズ構造 / 意図の伝達 / 演奏表情 / 聴取スキル / ピアノ演奏 |
Outline of Annual Research Achievements |
音楽演奏者は、楽譜に書かれた作曲家の意図を読み取り、自身の解釈を加えて、音として実体化する。聴取者は、その演奏聴取を通じて奏者の個性を聞き取る。音楽の専門家でなくても、当該ジャンルを聴き込んだ者であれば、特段意識せずとも奏者の個性は理解できるものであるが、個性を識別できる理由や、その背景となる情報処理メカニズムについてはよくわかっていない。本研究課題は、個性表出の対象としてフレージングに着目して、この問題に迫るものである。 今年度の目標は、(a)初年度に検討した手続きに則り、実験規模を大きくしてデータ収集を実施すること、(b)フレーズ構造の伝わりやすさに関する演奏表現上の要因について検討を進めることの2点である。(a)について、初年度は一回の実験で同時に参加できる被験者が1-5名程度であったことから実施効率の点で難があり、1回の参加人数を数十人単位に増やした場合の状況を確認する必要があった。 (b)については、聴取時にピアニストの演奏時の振る舞いを視覚的に見ているかどうかでもフレーズ構造の受容に差異が現れるかどうかが特に議論の対象となった。そこで、まずは60名程度を対象に一会場に集まってもらい、共通のスピーカーとスクリーンを介し(1)演奏時の動画を見ながら聴く、(2)演奏音のみを聴くという二つのパターンを用意した上で、初年度と同じプロトコルでの聴取実験を試行した上で、データ収集作業の効率化を測るための実験ツールの整備に取り組んだ。これらを通じて、(1)演奏動画と楽譜との間の視線移動に伴う聴取時の負荷を軽減することが期待できるようになった、(2)これまでは対面でのみの実験環境を前提としていたが、オンライン越しでも実験ができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験規模を大きくしてデータ収集を実施し「フレーズ構造」の伝わりやすさに関する演奏表現上の要因について検討を進めるにあたり、人数規模を増やすことで実験データの収集作業の効率化を測るため、オンラインで実施可能な実験ツールを整備する必要が生じた。そのプロトタイプシステムが稼働し始めた冬季に、2回目の予備実験に臨む予定であったが、新型コロナウィルス感染症対策に伴い、外出自粛および大学施設の閉鎖を余儀なくされたことから研究全般の遂行が困難となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はフレーズ構造の介されやすさについての検討を深化させる過程で、大人数の聴取データを収集するための実験ツールの整備を行った。次年度はそのツールを用いつつ、改めて聴取実験を再開し、フレーズ構造と、強弱法、緩急法、アーティキュレーション等の演奏制御情報との関係を探っていく。 新型コロナウィルス感染症対策「新しい生活様式」に伴い、対面での聴取実験に当たっては三密条件を避ける工夫を徹底させる必要がある。幸い、実験ツールは外出自粛前からオンラインでも実施できるように設計しているので、社会的な状況を踏まえつつ対面とオンラインとを組み合わせて引き続き調査を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、冬季に予定していた聴取実験と研究会出張が中止になったため。聴取実験については次年度に改めて実施する。
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Research Products
(4 results)