2018 Fiscal Year Research-status Report
コラーゲン分析による日本の遺跡出土の「同定不能骨片」同定のための基礎的研究
Project/Area Number |
18K18521
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
江田 真毅 北海道大学, 総合博物館, 講師 (60452546)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 木綿子 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (00450635)
藤田 祐樹 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究主幹 (50804126)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | コラーゲンタンパク / 種同定 / 動物考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
コラーゲンタンパクのアミノ酸配列の違いに基づく遺跡出土動物骨の同定は、ヨーロッパを中心に近年急速に発達している。一方で、ヨーロッパと日本では生息する種が異なるため、ヨーロッパで作成された同定基準は日本で直ちに適用できるものとはならない。そこで、本研究では日本の遺跡から出土した「同定不能骨片」の同定のために、日本産哺乳類を対象としたコラーゲンタンパク分析による骨の同定基準を作成し、実際に遺跡出土資料を同定するために研究を進めている。今年度は以下の実験をおこなった。
1.北海道大学総合博物館および国立科学博物館に収蔵されている現生の日本産哺乳類を中心にコラーゲンタンパクの抽出とトリプシン切断断片のピークリストの作成をおこなった。その結果、ニホンザルやタヌキ、ニホンカモシカなど、これまでコラーゲンタンパク分析がなされたことのない日本産哺乳類も含む、11科17種について良好なトリプシン切断断片のピークリストが得られた。得られたピークには特定の科あるいは特定の複数の科に特徴的に出現するものが含まれていた。今後、分析標本の数を増やしていくことで、これらのピークを利用して科あるいはより低次の分類群を単位とした遺跡資料の同定に利用できると考えられる。 2.沖縄県糸満市の真栄平洞窟から出土したリュウキュウジカのコラーゲンタンパク分析を実施した。しかし、コラーゲンの劣化のためか、トリプシンの切断断片のピークはほとんど得られなかった。利用するサンプル量を増やす、コラーゲンタンパクの抽出方法を改良する、濃縮や脱塩の方法を改善するなどの対応が必要と考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析できた標本数はやや少なかったものの、これまでに分析したほぼすべての現生哺乳類標本で、良好なコラーゲンタンパクのトリプシン切断断片のピークリストが得られている。また、得られたピークには特定の科あるいは特定の複数の科に特徴的に出現するものが含まれており、これらのピークを利用して科あるいはより低次の分類群を単位とした遺跡資料の同定に利用できることが確認できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに分析したほぼすべての現生哺乳類標本で、良好なコラーゲンタンパクのトリプシン切断断片のピークリストが得られているため、今後も当初の予定通り現在の方法で分析標本の数を増やし、ピークリストを作成して、遺跡資料の同定に有用なピークを特定する。 一方、沖縄県糸満市の真栄平洞窟から出土したリュウキュウジカでは、良好なピークリストが得られなかったため、サンプル量を増やす、コラーゲンタンパクの抽出方法を改良する、濃縮や脱塩方法を改善するなど、分析方法を検討していく。
|
Causes of Carryover |
研究補助者の雇用が遅れ、当初の予定より人件費、試薬代、および共通機器の利用料金が安くなったために、次年度使用額が生じた。 次年度には、研究補助者を雇用するための人件費、コラーゲンタンパクの抽出にかかる試薬代、および共通利用機器である飛行時間型質量分析計の利用料金として使用する。
|